妊娠・出産に際して、あわてて医療保険に入る必要はありません。ただし、いずれ入るつもりなら、早くしましょう。

おそらく、女性が医療保険を強く意識するタイミングの一つが、妊娠・出産でしょう。

ここでは、妊娠・出産の費用について、幅広く情報提供しつつ、医療保険の使い方・選び方について、踏み込んでご説明します。

妊娠・出産のための医療費は、原則として10割負担です。健康保険など公的医療保険の割引を受けられません。

正常な妊娠・出産は、病気ではないので、健康保険など公的医療保険の対象にはなりません。
つまり、かかった医療費の3割ではなく、全額を自己負担しなければなりません。

厚生労働省『出産育児一時金の見直しについて』(平成26年)によると、全国の出産費用の平均は486,376円でした。

実際にかかる金額は、医療機関や分娩方法などによって異なります。
とは言え、地域ごとに相場と呼べるものがあるようです。

下表は、都道府県別の出産費用です。平均より高いところに*を付記しています。

北海道 427,536円
青森県 424,054円
岩手県 450,152円
宮城県 513,764円 *
秋田県 439,574円
山形県 486,012円
福島県 461,714円
茨城県 496,897円 *
栃木県 525,763円 *
群馬県 492,802円 *
埼玉県 511,750円 *
千葉県 492,400円 *
東京都 586,146円 *
神奈川県 534,153円 *
新潟県 486,386円 *
富山県 457,650円
石川県 456,037円
福井県 453,697円
山梨県 477,026円
長野県 492,076円 *
岐阜県 474,691円
静岡県 481,314円
愛知県 497,657円 *
三重県 489,252円 *
滋賀県 471,587円
京都府 472,706円
大阪府 492,944円 *
兵庫県 492,866円 *
奈良県 479,864円
和歌山県 443,955円
鳥取県 399,501円
島根県 453,170円
岡山県 479,016円
広島県 475,611円
山口県 426,973円
徳島県 457,491円
香川県 434,345円
愛媛県 441,567円
高知県 415,006円
福岡県 459,253円
佐賀県 430,352円
長崎県 446,221円
熊本県 411,449円
大分県 422,215円
宮崎県 420,879円
鹿児島県 426,711円
沖縄県 414,548円
全国 486,376円

もっとも高い東京都と、最も低い鳥取県との間に、18万円以上の差があります。
全体としては、東高西低の傾向が見られます。

いずれにしても、これらの金額の全額が、自己負担になります。かなりの金額です。

妊娠・出産の費用を支援する制度がいくつかあります。わたしたちの負担を大幅に減らすことができます。

少子高齢化が社会問題となっているだけに、妊娠・出産を支援する公的制度が、いくつもあります。
組み合わせて活用すれば、金銭的な負担を大幅に軽減できます。

出産を支援してくれる出産育児一時金

全国どこに住んでいても、出産すると、出産育児一時金をもらうことができます。
この制度のポイントは、以下の2つです。

  • 支給額は42万円
  • 原則として、医療機関等へ直接支払われる。

この制度は、健康保険などの公的医療保険の一制度として運営されています。ただし、申請手続きは病院・診療所でできるので、手軽に利用できます。

出産育児一時金は、原則として医療機関等へ直接支払われます。その場合、わたしたちは差額のみを負担します。

希望すれば、42万円をわたしたちが受け取ることもできます。

妊婦健康診査への支援を地方自治体が実施

妊娠期間中は、定期的に医療機関に通うことになります。検診の回数は、合計して14回程度になります。

残念ながら、妊婦健康診査も、健康保険など公的医療保険を使えません。通常の健診で1回4~5千円くらいかかります。特別な検査を受けると、さらに高くなります。

つまり、最低限の健診を受けるだけでも、合計して56,000〜70,000円くらいかかります。上でご案内した出産費用とは別にかかります。

そこで、ほとんどの地方自治体が、健診費用の支援をおこなっています。
お住いの地域の地方自治体(市町村)にお問い合わせください。

その他の支援制度

その他の支援制度をご案内します。一部の人しか利用できないものもあります。

出産手当金

出産のために勤務先を休み、その間の給与をもらえなかったときに、健康保険等の公的医療保険から出産手当金が出ます。

つまり、妊婦さんが、会社・役所等に勤務する、公的医療保険の被保険者であることが、条件になります

もらえる金額は、簡単に言うと、標準報酬月額を日割りにして、その3分の2を日数分です。けっこう大きいです。
詳細は、入っている公的医療保険の窓口に、お問い合わせください。

育児休業給付金

従業員が育児休業中にもらえる給付金です。

雇用保険に加入していないともらえません。よって、個人事業主・自営業はもらえません。また、会社員でも、勤務先が雇用保険をやっていないと、利用できません。

確定申告の医療費控除

1年間の医療費合計が10万円を超えら、確定申告の医療費控除で、税金がいくらかもどってきます。

ただし、上でご案内した一時金や手当金などを活用したら、10万円を超えないかもしれません。

とりあえずは、領収書・レシート類をしっかり保管しておきましょう。
健診のための交通費なども、必要経費になるので、記録を残しておきましょう。

妊娠・出産でトラブルが発生したら、その医療費は、健康保険など公的医療保険の適用を受けられます。

妊娠・出産でトラブルが発生したら、それに対処するための費用には、健康保険など公的医療保険が適用されます。
つまり、3割負担になるし、治療費が高額になったら高額療養費制度を使えます。

健康保険など公的医療保険が適用されるのは、以下のようなケースです。

  • つわり
  • 切迫流産、流産
  • 子宮頸管無力症
  • 妊娠高血圧症候群
  • 切迫早産、早産
  • 前期破水
  • さかごや前置胎盤などの超音波検査
  • 児頭骨盤不均衡のためのX線撮影
  • 微弱陣痛などのため陣痛促進薬
  • 止血のための点滴
  • 吸引分娩、鉗子分娩
  • 帝王切開分娩
  • 医学的対応の場合の無痛分娩の麻酔
  • 赤ちゃんが新生児集中治療室
  • 死産

同じ検査や治療でも、その目的によって、公的医療保険の対象になる・ならないが左右されます。
異常な妊娠・出身への対処を目的とするなら、公的医療保険が適用されます。

ちなみに、公的医療保険の対象になる場合は、治療費が高額になったら、高額療養費制度を利用できます。この制度については、高額療養費制度の仕組みで説明しています。

妊娠・出産でトラブルが発生すると、民間保険会社の医療保険からも、お金が出ます。

民間の保険会社の医療保険が、妊娠・出産で、どう役に立つのか、整理して説明します。

ほとんどの医療保険では、主契約(メインの保障)は入院給付金(入院日数分、給付金が出る)と手術給付金(手術1回毎に、給付金が出る)です。

それぞれについて、以下で説明します。

入院給付金

医療保険に加入するときに、入院1日あたりの給付金の金額を決めておきます。
実際に入院したら、その日数分のお金を、入院給付金として、受け取ることができます。

公的医療保険と同じ扱いになることが多い

健康保険などの公的医療保険では、正常な妊娠・分娩は病気ではないとみなされました。

民間の医療保険も、概ね同じ扱いになっています。
つまり、正常な妊娠・分娩のときは、入院給付金は出ません。トラブルが発生したら、病気として、保障の対象になります

また、医療保険から入院給付金が出るとしても、入院にかかった費用の全額が出るとは限りません。

たとえば、分娩(母胎から赤ん坊が出る)前に異常に対する治療がおこなわれ、分娩後は通常通りのケアを受けた場合、下図のように、入院給付金は分娩前の期間のみ、ということもありえます。

出産に以上があったとき、医療保険を利用するイメージ

保障されるかどうかの条件は、各商品の約款(保険の詳細な説明書)に、具体的に記載されています。

妊娠・出産の異常で、入院が長引くことは少ない

参考までに、厚生労働省『患者調査』(平成26年)から、妊娠・出産に関連する入院日数を抜き出しました。

病名 入院日数
単胎自然分娩 5.6日
自然流産 8.9日
医学的人工流産 0.8日
妊娠高血圧症候群 11日
切迫流産等妊娠早期の出血 11.6日
早産 9.1日
分娩後出血 5.1日
その他の障害、合併症 10.2日

正常分娩である「単胎自然分娩」が5.6日の入院です。もっとも長いのが、「切迫流産等妊娠早期の出血」の11.6日です。

すべての入院の平均日数が31.9日なので、それと比べると、入院が長引く危険性は、割と低いようです。

手術給付金

入院給付金から独立した、別の給付金です。
手術を受けるごとに、あらかじめ決まった金額が、手術給付金として医療保険から出ます。

正常分娩は手術ではないので、手術給付金の対象にはなりません。
何らかのトラブルで、正常分娩が難しくなって、手術をしたら、この給付金の対象になります。

近年増えている帝王切開(手術により退治を取り出す)は、その典型的な例です。

帝王切開の治療費については、下で詳しく説明します。

帝王切開のためだけに、医療保険に加入する必要性は、低いです。

帝王切開で出産する人の割合は年々高くなっています。

5人に1人が帝王切開

厚生労働省『医療施設調査』(平成26年)によると、帝王切開の1ヶ月間の実績は以下のようになっています。

病 院 診療所 合 計
分娩件数 46,451 38,765 85,216
帝王切開件数 11,543 5,254 16,797
帝王切開率 24.8% 13.6% 19.7%

「病院」と「診療所」の違いは、入院施設の規模の違いです。
この2つを合わせると、5人に1人が帝王切開で出産しています。かなり高い確率です。

帝王切開になるケース

帝王切開には、妊娠の状態などから計画的に実施する場合と、自然分娩から緊急で帝王切開に切り替える場合とがあります。

計画的な帝王切開の例

  • 多胎妊娠(双子以上)
  • 前回も帝王切開だった
  • 母体合併症、母体感染症
  • 逆子、巨大児

緊急の帝王切開の例

  • 分娩に時間がかかりすぎる
  • 子宮内感染などのトラブル
  • 未熟児など、胎児の状態が悪い

帝王切開の費用負担は大きくない

帝王切開の手術の費用は、厚生労働省が22万2000円に決めています。全国どの医療機関でも、同じ料金です。

ただし、帝王切開のための診察・検査・投薬の費用や、入院日数の増加があるので、医療費の実費はもっと高くなります(これらの金額は、医療機関によって異なります)。

とは言え、帝王切開は、健康保険など公的医療保険が適用されるので、わたしたちの負担は3割です。
手術代だけでなく、それに付随する医療サービス(診察・検査・注射など)の費用も3割になります。サービス内容が正常分娩のときと同じでも、3割に圧縮されます。

その結果、図のように、帝王切開の自己負担は、正常分娩と同程度に落ち着きます

帝王切開の、医療費自己負担

実際には、帝王切開のほうが安くなる病院・診療所が、意外と多いです。むしろ、帝王切開が高くなる医療機関は、警戒したほうが良さそうです。

医療保険に加入する必要性は低い

正常分娩のときは、どのみち医療保険から給付金は出ません。出産育児一時金(42万円)などで足りない分は、医療保険以外の方法で調達しなければなりません。

それの調達の目処がたっていたら、仮に帝王切開になっても、医療費を支払えそうです。
つまり、思いがけず帝王切開になったとしても、あわてることはありません。

もちろん、想定外の出費はありえます。医療保険があったほうが、安心感は大きいです。
だからといって、妊娠・出産のために、無理をしてまで医療保険に入ることはありません。少なくとも・・・

妊娠・出産の期間だけ加入する、というような医療保険の使い方は、お勧めできません。

医療保険に関心があるなら、妊娠・出産にかかわりなく、早く加入しましょう。

帝王切開の例のように、妊娠・出産のためだけなら、医療保険に入る必要はありません。

しかしそれでも、いずれ医療保険に入るつもりがあるなら、早くすることをお勧めします。

死亡保険や医療保険は、早く入りたい

死亡保険や医療保険は、健康状態に問題があると、加入を断られたり、通常より不利な条件で加入することになります。
不利な条件とは、一部の病気が対象外になるとか、保険料が割増になるとかです。

健康に不安を感じ始めてから、医療保険の検討に着手する、というのでは手遅れになるかもしれません。
保険に入る必要がありそうなら、健康のうちに決断しましょう。

また、下で説明するように例外はありますが、全体的な傾向として、年齢が高くなってから加入すると、1回の保険料が高くなるだけでなく、保険料の総額も高くなります

保険料の総額は、出産適齢期に高くなる

医療保険の男性の保険料は、1回あたりの金額も、生涯の保険料累計も、早く加入するほうが安くなります。

一方、女性の場合は、1回あたりの保険料は、やはり若いほど安くなります。しかし、保険料累計は、出産適齢期に高くなります。

具体例をご覧ください。
オリックス生命の医療保険『CURE(キュア)』に入院給付金5,000円で加入し、終身保障・保険料65歳払済を選んだときの、女性の保険料を下表にまとめました。

加入年齢 月々の
保険料
保険料
の累計
25歳 2,006円 962,880円
30歳 2,276円 955,920円
35歳 2,623円 944,280円
40歳 3,208円 962,400円
45歳 4,199円 1,007,760円

月々の保険料は、加入年齢が上がるとともに、高くなっています。
他方、保険料の累計は、以下のように変化しています。

医療保険の、女性の加入年齢別保険料累計

保険の仕組み上、保険を使う可能性が高いほど、保険料も高くなります。

25歳や30歳のほうが、35歳より高くなっている理由は、妊娠・出産に関連して、医療保険を使う可能性が高いからでしょう。
上で説明したように、5人に1人の割合で帝王切開しています。かなりの高い割合です。

35歳以降は、加入の時期が遅くなるほど、1回あたりも累計も、どんどん高くなっています。
年齢が上がるほど、病気のリスクが高くなるからでしょう。

それでも、加入時期を遅らせることはない

上のグラフを見ると、医療保険加入を35歳頃まで待つほうが、オトクに見えるかもしれません。

しかし、35歳までの間に、健康状態が悪くなるかもしれません(健康診断の一部の数値が悪くなる等)。そうなったら、保険料が割増になったら、最悪加入できなくなってしまいます。

また、上の試算だと、25歳と35歳の保険料累計の差は18,000円ほどです。
一方、上の試算の保障プランで、帝王切開で7日間入院する場合、入院給付金35,000円と手術給付金100,000円の、合計135,000円を受け取ることができます。

135,000円を受け取るのは、5人に1人の確率ですが、出産費用に不安をお持ちの人には、安心材料になります。

結局・・・

医療保険に関心をお持ちなら、加入は早くしたほうが良いし、だったら妊娠前が望ましいです。。


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妊娠・出産のために、医療保険に入るときに、意識していただきたいことが、3つあります。

妊娠・出産を機に、医療保険を検討されるなら、以下の3点に留意してください。

医療保険には、妊娠前に加入する

妊娠・出産に備えるなら、医療保険には妊娠前に加入しましょう。

実際には、妊娠27週目までであれば、ほとんどの医療保険に加入できます。
ただし、妊娠・出産に関わる治療の大部分が、保障の対象外にされてしまいます。たとえば、帝王切開や切迫早産などで治療しても、保険からお金が出ません。

妊娠後の医療保険加入は、いろいろと不利になります。

妊娠・出産のための保障は、主契約だけでOK

最近の医療保険は、たくさんの特約を用意しています。どれを付けるか、迷われるかもしれません。

上で、妊娠・出産に関する病気の入院日数の表をご覧いただきましたが、重症化する危険性は低いようです。

妊娠・出産のために、特約を付加する必要はありません。主契約の保障だけで十分です。女性専用の医療保険にするメリットも乏しいです

一生続けるなら、老後を想定した保障に

妊娠・出産に限ると、主契約だけで十分かもしれません。しかし、医療保険を長く続けるつもりなら、老後を想定した保障にしておきたいです。

いったん医療保険に入った後、数年して保障を厚く変更したくなるかもしれません。新しい商品に乗り換えたくなるかもしれません。
健康状態やお金のやりくりが苦しくなって、変更や乗り換えができないこともありえます。

目先のことだけ考えるのではなく、できるだけ一生使えそうな保障内容にしておきたいです。

とは言え、一般の消費者が、数十年先を見越した保障プランを作るのは難しいです。下でご案内するような、保険の専門家を活用しましょう。


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医療保険の検討・見直しは、保険の専門家を上手に活用しましょう。

医療保険の仕組みは、複雑というほどではありません。
しかし、保障プランや商品選びを適切に判断しようとすると、迷うポイントがいくつもあります。

たとえば、病気の実際(女性が注意すべき病気・ケガなど)を、ある程度は知っておきたいです。
また、健康保険や高額療養費制度など、公的な制度の知識も、欠かせません。
生保各社の主な商品を比較するには、商品知識もそれなりに必要になります。

一般の消費者にとっては、やや荷が重いかもしれません。医療保険は、長く続ける可能性が高いので、判断ミスは怖いです。

そこで、保険の専門家の活用をお勧めします。その具体的な方法は、以下でご案内しています。

を、ご覧ください。

 ご注意

統計データや保険の商品内容については、慎重に扱っていますが、古くなっていたり、誤りがあるかもしれません。保険の専門家に相談した上で、最終的に判断を下してください。

  • FP(ファイナンシャル・プランナー)は、保険を含む、資産・家計・税務知識の公的資格保有者。
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