わかりにくい保険の入り方をすると、とんでもない人災が起こることを、わたしたちの社会はすでに経験しています。

生命保険は形がなくて複雑な仕組みの商品です。しかも、加入してから、実際に保険金をもらうまでに、数十年のタイムラグがあります。
そのため、加入したときには中身を理解できていても、保険金を請求する頃には、理解があいまいになりがちです。

そうなったときに怖いのが、保険金の請求漏れです。

保険のわかりにくさが巻き起こした、保険金不払い問題

2005年以降生保・損保の保険金不払いが、大きな社会問題になりました。本来、生命保険会社から支払われるはずの保険金・給付金の不払いが、2001年度からの5年間で131万件、964億円にも上りました。すごい数字です。

加入者から請求があったのに保険金を支払わない、という悪質な不払いもあるにはありました。

しかし、不払いの多くは、加入者からの請求がないことによる不払いでした。加入者が、本来なら2つの保険金を請求できるのに、1つの請求しか請求しなかったところ、保険会社の方では請求のあった分の保険金しか支払わなかった、というようなケースです。

ちょっと調べればわかるのに、放置して保険金を払わない保険会社の体質が、批判されました。

請求漏れを起こさない工夫が必要

保険会社の体質・姿勢に問題があったのは言うまでもありません。
生命保険というわかりにくい商品を販売するからには、加入者が請求漏れを起こさないように、働きかけるくらいの努力は欲しいものです。

とは言え、まずは加入者からのアクションや情報提供がないと、保険会社のできることは限られてしまいます。

よって、わたしたち消費者の立場では、いざとなったときに、保険金の請求漏れを起こさないような、対策をしておきたいです。

請求漏れを起こさないための工夫

自分の保険のことを最も理解できているのは、加入するときです。
その時点で、20年後、30年後になっても請求漏れしないように、手を打っておきたいです。

特に死亡保険の場合、保険金を請求するのは、加入者本人ではなく遺族です。ということは、加入者以外の人でも、保険金の請求漏れを起こさないように、気を配りたいです。

保険には、わかりやすく入る

そもそも、わかりにくい保険に加入したり、まぎらわしい入り方をしていたら、混乱の元になります。
加入するときに、以下のことに留意しましょう。

  • 機能が盛り込まれた保険に加入しない。
  • 加入後に、保障内容が自動的に変化する保険に加入しない。
  • 同じような保険に、重複して加入しない。

上のような入り方をすると、加入するときには納得していても、数十年後には混乱を招きかねません。

加入後に意識しておきたいこと

  • 保険証券、約款、見積書・設計書などを整理して保管する。
  • どうしても必要なときをのぞいて、保険を見直さない。

各項目について、下で詳しく説明します。

わかりにくい保険の典型が、セット商品型生命保険です。定期付終身保険、アカウント型保険、組み合わせ型保険等々・・・

図は、明治安田生命の組立総合保障保険『ベストスタイル』の、保障内容です。

明治安田生命「ベストスタイル」の仕組み

加入してから20年、30年後に不幸が起こったとして、この図を見て、請求できる保険金額を正確にはじき出す自信はおありでしょうか?

セット商品型は、それだけで混乱の元

この商品のわかりにくさは、たくさんの特約からきています。特約の名称を見ても、説明文を読んでも、要領を得ません。

もっとも、一つの商品の中に一通りの保険が盛り込まれているので、保険会社の窓口に行って、しつこく確認しながら手続きすれば、請求漏れの危険を回避できるでしょう。

それでも、自分で中身を理解できないということは・・・

その保険が適切かを自分で判定できないので、その後は保険会社の言いなりになってしまいます。

ムダのある入り方を続けて、損をする危険があります。

多数の更新型の特約は危険!

上図の保障プランは、すべての特約が10年更新型です。
更新は自動なので手間いらずですが、保険料は、そのときの年齢を元に再計算されて、値上がりします。

10歳トシをとると、保険料はかなり上がります。そこで、負担を軽減するために、一部の特約を削ったり、保険金額を減らして更新する、ということになりがちです。

保険料を下げるための無理矢理の削減なので、筋の通らない保障内容になります。
そんな見直しが数回続くと、いかに保険の書類を保管していても、わけがわからなくなりそうです。

更新型が悪い仕組み、ということではありません。期間限定で保障が欲しいときに、更新型は便利です。

しかし、上の『ベストスタイル』の図のように、老後まで続けたい複数の保障を、まとめて更新型にするのは、不適切で危険です。

セット商品型保険を主力商品とする伝統的生保

セット商品型生命保険を主力商品として、積極的に販売しているのは、明治安田生命のような伝統的生保です。以下が当てはまります。

  • 朝日生命
  • 住友生命
  • 第一生命
  • 太陽生命
  • 日本生命
  • 富国生命
  • 三井生命
  • 明治安田生命
  • JA共済

これらの保険会社(共済)の主力商品は、検討の早い段階で、候補から外しておきましょう。


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目的ごとに、単体の保険に加入するのが、保険料のムダを省き、請求漏れを防ぐ近道です。

わかりにくい保険の入り方のデメリットで、請求漏れに次いで心配されるのが、保険の重複です。

保険に加入してから何年か過ぎて、保障内容の記憶があいまいになった頃に、保障が重複する別の保険商品に入ってしまう危険があります。

保険の重複の、ありがちなパターン

と言っても、そっくり同じタイプの保険に二重に加入することは、めったにないでしょう。

ありがちなのは、主たる目的は異なるけれど、部分的に重複する2つの商品に、二重に入ってしまうケースです。たとえば・・・

  • 死亡保険と、学資保険の育英年金との重複。
  • 死亡保険と、住宅ローンの団体信用生命保険との重複。
  • 死亡保険の医療特約と、医療保険との重複。
  • 死亡保険の医療特約と、がん保険との重複。
  • 医療保険とがん保険との重複。
  • 医療保険と、傷害保険(自動車保険、自転車保険を含む)との重複。

病気やケガで治療を受けたら、思いがけず2つの保険から保険金が出たら、ちょっとうれしいかもしれません。

しかし、逆のケースも考えられます。
保険の契約期間内に保険を使う機会がないまま、保険の重複に気づかないで、ムダに保険料を払い続けて終わる、ということもありえます。

また、重複して入っている自覚がなければ、どちらか一方の保険金の請求を漏らしてしまう危険もあります。

できるだけ、目的ごとに別々の保険に加入する

保険の重複や、請求漏れを防ぐ第一歩は、目的ごとに、別々の保険に加入することです。

保険重複や請求漏れを防げる

別々に加入すると、その都度加入手続きをしたり、そのための書類を作成するのは面倒です。

しかし、すっきりとした入り方なので、20年後30年後に見返しても、混乱しにくくなります。
保険の重複や請求漏れの防止になります。

保険に関しては、現在の効率性より、20年後30年後のわかりやすさ、使いやすさを優先しましょう。

将来、保険を整理するときも、やりやすい

セット商品型の保険や、特約てんこ盛りの保険には、別の懸念もあります。
将来保険を整理するときに、望みどおりにできないかもしれません。

というのは、このタイプの商品には、いろいろと細かな制約があるからです。
そうした制約は、加入するときには説明されませんが(説明されても覚えきれませんが・・・)、実際に手続きに臨むと、あれやこれやと出てきます。たとえば・・・

  • 特約だけを残して、主契約(保険の保障)を解約できない。
  • 主契約を解約すると、特約も自動的に消滅する。
  • 保険料に最低限度額があって、それを下回るくらい保険を削ることはできない。
  • 「A特約を付けるには、B特約も必ず付ける」みたいなルールがある。
セット商品型の生命保険のデメリット

保険の目的が異なれば、将来の使い方や必要性もそれぞれ異なります。先々、保険を整理したくなったときのことを考えると、目的ごとに別々の保険に加入しておきたいです。

そうしておけば、上のような制約はありません。

保険の書類の整理・保管についての、多少は役に立つかもしれない、スリーポイントです。

保管のやり方に、特別なことはありません。A4サイズが入るファイルやケースなどに、関連書類一式をまとめてください。そして、わかりやすい場所においてください。

役に立つかもしれないことを、3つほどご案内します。

保険証券さえあれば、保険金・給付金の請求は、問題なく出来ます。

加入したときの書類、定期的に保険会社から送られてくる書類と、年数が経過するにつれてたまってきます。

保険金や給付金を請求するのに必要なのは、保険証券だけです。かさばって困るようでしたら、保険証券以外のものを処分しても、本気で困ることにはなりません。

ただ、『約款』『ご契約のしおり』などの冊子は、手元においておきましょう。じっくり読む機会は無いかもしれませんが、生命保険契約の契約内容が詳しく書かれています。

加入時の見積書・設計書を残しておくと、後でわかりやすいかも

保険証券や約款は、生命保険契約の契約書類なので、詳細ですが、わかりやすいとは言えません。
できれば、加入している保険の内容が、わかりやすく図で説明されている書類も、手元にほしいです。

どの保険会社も、加入するときの見積書・設計書は、目いっぱいわかりやすく作っています。おススメです。
保険会社によっては、毎年郵送してくる、契約内容の説明資料でも代用できるかもしれません。

生命保険料控除証明書を、お忘れなく

生命保険料控除証明書は、保険金・給付金の請求とは関わりませんが、お忘れなく。保険会社によりますが、毎年秋~冬にかけて送られてきます。

紛失しても再発行できます。でも、紛失すると、確定申告そのものを怠る危険があるので、管理方法を決めておきたいものです。

保険の見直しには、前向きにやっていただきたい見直しと、慎重でありたい見直しがあります。

生命保険、医療保険、がん保険、個人年金保険などは、何十年と続ける可能性があります。
その間に、生活環境とか保険についての考え方とかが、変わるかもしれません。

必要があれば、そうした変化に合わせて、保険の見直しもおこないたいです。
ただし、保険の見直しには、ぜひやりたいものと、慎重に検討したいものがあります。

前向きに検討したい保険の見直し

前向きに進めていただきたいのは、保険の内容を生活環境の変化に合わせる見直しです。

生活環境の変化とは、たとえば以下です。

  • 就職
  • 結婚
  • 出産
  • 住宅購入
  • 子どもの自立
  • 年金受給開始

特に、保障を厚くしたり、追加で加入するときは

速やかに進めましょう。
保険料は年齢とともに高くなります。また、健康状態が悪くなると、保険に入れなくなることもあります。

逆に、保障を小さくしたり、解約するのは

簡単な手続き(書類等の提出など)だけで終わります。
とは言え、必要の無くなった保険のために、保険料を払い続けるのはもったいないので、手早く済ませましょう。

慎重に検討したい保険の見直し

慎重に検討したいのは、商品改定・新商品登場にともなう保険の見直しです。どちらかというと、保険会社の都合による見直しです。

決定的な新商品は、めったに登場しない

特に、現在の保険を止めて、新しい商品に入り直す、という形での見直しには、慎重であってください。

新しい保険商品に入り直すと、保険料が上がります。新登場の保障・サービスの分だけでなく、元の保険と変わらない部分の保険料まで高くなります

保険会社は、競って新しい保障やサービスを開発しています。新しい商品ほど、魅力的に見えるのは当然のことです。
しかし、冷静に考えると、無いならないで、何とかなりそうなものがほとんどです。

むしろ、どうしても入りたくなるような決定的な新商品は、めったに登場しません

保険の入り方を、わかりやすく保つ

保険を見直すと、保険の入り方がわかりにくくなる危険があります。

初めに、保険の役割分担を整理してわかりやすく加入しても、その後一部の保険を見直すと、全体のバランスが崩れやすいです。

できれば、一部の保険を見直すときでも、加入している保険全体を点検したいです。
しかし、それにはかなり手間がかかります。なかなかできることではありません。

だったら、保険の見直しは、どうしても必要な場合に限りたいです。
商品改定・新商品登場にともなう保険の見直しは、その必要性を冷静に見極めてください。

 ご注意

統計データや保険の商品内容については、慎重に扱っていますが、古くなっていたり、誤りがあるかもしれません。保険の専門家に相談した上で、最終的に判断を下してください。