女性専用の医療保険は必要?
結論から言うと、女性専用の医療保険は必須ではありません!
多くの保険会社が、 女性専用の医療保険を販売しています。あるいは、医療保険に 女性疾病特約を用意しています。
女性専用の医療保険は、一般の医療保険をもとにして、女性特有の病気のための保障を強化した保険商品です。
ということは、一般の医療保険は、どちらかというと男性用ということでしょうか?
また、女性と男性で、必要な医療保障には、大きな隔(へだ)たりがあるということでしょうか?
確かに、女性と男性とで、かかりやすい病気に違いはあります。しかし、そのどちらも、一般の医療保険でおおむねカバーできます。
女性特有の病気とされる病気は、入院期間が60日以内に収まります。一般の医療保険で十分です。
まず、医療保険は、男女両用でも女性専用でも、入院保障中心の保険です。そこで、入院治療について、調べた結果をご説明します。
女性特有の病気の入院期間は60日以内
女性特有の疾病とされる病気の、平均入院日数を表にまとめました。平均入院日数は厚生労働省『患者調査』(平成26年)から引用しました。
病名 | 平均入院日数 |
---|---|
乳房の悪性新生物 | 12.5日 |
子宮頚(部)の悪性新生物 | 17.9日 |
子宮体(部)の悪性新生物 | 10.1日 |
子宮の部位不明の悪性新生物 | 33.4日 |
卵巣の悪性新生物 | 11.1日 |
その他の女性生殖器の悪性新生物 | 16.2日 |
子宮頚(部)の上皮内癌 | 4.4日 |
乳房の良性新生物 | 12.5日 |
子宮平滑筋腫 | 7.9日 |
卵巣の良性新生物 | 12日 |
卵巣機能障害 | 4.4日 |
関節リウマチ | 23.4日 |
乳房の障害 | 4.4日 |
卵管炎及び卵巣炎 | 7.3日 |
子宮頚(部)の炎症性疾患 | 4.0日 |
その他の女性骨盤臓器の炎症性疾患 | 10.4日 |
子宮内膜症 | 7.6日 |
女性性器脱 | 8.7日 |
卵巣,卵管及び子宮広間膜の非炎症性障害 | 4.7日 |
月経障害 | 4.5日 |
閉経期及びその他の閉経周辺期障害 | 13.2日 |
女性不妊症 | 0.7日 |
その他の女性生殖器の疾患 | 3.8日 |
妊娠高血圧症候群 | 11.0日 |
妊娠早期の出血(切迫流産を含む) | 11.6日 |
前置胎盤,胎盤早期剥離及び分娩前出血 | 13.9日 |
その他の胎児及び羊膜腔に関連する治療 | 13.2日 |
早産 | 9.1日 |
分娩後出血 | 5.1日 |
その他の妊娠及び分娩の障害及び合併症 | 10.2日 |
医療保険の入院給付金は、標準的な保障で、1入院あたり 60日を限度としています。
上の表によると、もっとも入院期間の長い病気が、「子宮の部位不明の悪性新生物」(33.4日)です。次に長いのが、「関節リュウマチ」(23.4日)です。
表の日数はあくまでも平均なので、もっと長引くかもしれません。しかし、60日を超えることは、めったになさそうです。
ということは、 女性特有の病気の入院でも、一般の医療保険の、標準的な保障で、カバーできそうです。
正常分娩は病気ではないので、女性専用の医療保険でも、女性疾病特約でも、保障されません。
出産には何かと費用がかかります。しかし、正常分娩は病気ではないので、医療保険の保障の対象外です。
妊娠中のトラブルの治療は、医療保険の対象
出産にかかわるすべてが、医療保険の対象外になるわけではありません。
帝王切開の手術は、病気と同じ扱いになります。健康保険など公的医療保険を使えますし、医療保険の対象にもなります。
女性専用の医療保険や、女性疾病特約でなくとも、一般的な医療保険なら入院給付金や手術給付金が出ます。
他にも、妊娠高血圧症候群、切迫早産、切迫流産、子宮頸管無力症、吸引分娩、早期破水、子宮外妊娠、前置胎盤、妊娠中毒症、死産などの 異常分娩は、医療保険の保障を受けることができます。
異常分娩に備えるなら、妊娠前に加入
妊娠してから医療保険に申し込むと、加入できても、異常分娩による入院や手術が、保障の対象外にされます。
これでは加入する意味がありません。
妊娠・出産に限らず、保険会社が条件を付けることがあります(ここでは、異常分娩による入院や手術を対象外にすること)。
ですから、医療保険をお考えなら、妊娠前に加入することをお勧めします。
なお、正常分娩で出産された後に、医療保険に加入するなら、上のような条件が付くことはありません。
女性特有の疾病に備えるより、入院給付金日額の増額や、保障日数の延長を優先的に検討しましょう。
手厚い医療保障をお望みの女性の方には、女性特有の病気より気にしてほしいことがあります。
男女の区別なくかかるけれど、女性の入院が長引きやすい病気です。入院が長引けば、健康保険や高額療養費制度があろうとも、治療費用はかさみますから。
いくつか例をあげると、以下のような病気です(厚生労働省『患者調査』(平成26年より))。
病名 | 男性の 入院日数 |
女性の 入院日数 |
---|---|---|
糖尿病 | 27.5日 | 45.4日 |
結膜炎 | 13.7日 | 47.7日 |
高血圧性疾患 | 29.4日 | 80.5日 |
くも膜下出血 | 78.2日 | 140.5日 |
脳動脈硬化(症) | 20日 | 158.8日 |
慢性肝炎 | 22.6日 | 47.1日 |
腰痛症及び坐骨神経痛 | 16.9日 | 40.7日 |
骨折 | 28.9日 | 43.4日 |
もちろん、女性より男性の方が重症化しやすい病気もあります。とは言え、女性の方が寿命が7年くらい長いので、入院の長期化への不安は、それだけ大きくなります。
特に、 三大疾病のうちの2つ、心疾患と脳血管疾患について、全体的に女性の方が入院日数が長くなっています。
よって、女性特有の病気のために使う保険料を、入院給付金の日額を増やすとか、1入院あたりの保障日数を60日より長くすることに回した方が、値打ちがありそうです。
医療保険の検討では、保険の専門家のアドバイスを受けながら、見積もりを見比べてください。
医療保険を選ぶには、保険の仕組みや商品知識は当然必要になりますが、治療の費用や期間について、健康保険や高額療養費制度などの知識も不可欠です。
また、医療保険に一度加入したら、数十年続けるかもしれません。主要な商品の見積もりを見比べて、納得して選びたいです。
保険の専門家を上手に活用することをオススメします。そのための手軽で安心な方法は、
賢い生命保険の入り方
をご覧ください。