医療保険は、見直さないのが前提
医療保険は、将来見直すことを前提に検討する、という誤ったアドバイスをする専門家がいます。
生命保険は、時代の変化に合わせて、商品内容が変化します。特に、医療保険とかがん保険などの、医療系の商品は変化が大きいです。
急速な高齢化にともなって、医療技術の発展が加速していますし、医療系の保険商品に対する関心も高まっています。そうした動向を背景に、医療保険・がん保険の商品改定やリニューアルが、活発になっています。
そうなってくると、加入してから、5年、10年が経過した医療保険は時代遅れになるので、見直した方が良い、という考えにいたるのでしょう。
しかし、この考え方は正しくないし、保険の販売を促進したいという、売り手の発想が透けて見えます。そういうのにノせられないように、ご注意ください!
医療保険は、将来、別の商品に加入できるとは限らないし、できても保険料は高くなって損です。
生命保険でも医療保険でも、健康状態が良くないと加入できません。この先、別の医療保険に入り直したくても、健康状態が悪いと、保険会社から断られます。
将来も健康と言い切れるなら、そもそも医療保険は不要
今が健康なら、5年後とか10年後に、健康状態が悪くて加入を断られる危険性は、低いかもしれません。しかし、低いから無視できるのだったら、そもそも、今の時点で医療保険に入る必要が無くなってしまいます。
何でもかんでも不安視していたら、物事を決められなくなってしまいます。どこかで割り切りは必要です。
とは言え、医療保険を検討するのに、今後も健康状態はくずれない、と割り切るのは意味不明です。
5年後とか10年後に、健康状態が良ければ、新しい医療保険に切りかえても良いでしょう。しかし、健康状態が悪くなれば、今の医療保険と一生付き合うことになるかもしれません。
そういう前提で、今現在の保障について考えるが、正しい医療保険との向き合い方です。
将来、他の医療保険に入り直すのは、損が大きい
古い医療保険には、5日未満の入院ではお金が出ないとか、放射線治療の通院ではお金が出ないとか、先進医療に対応していないとか、最近のものに比べて見劣りする点がいくつかあります。
とは言え、入院給付金と手術給付金を柱とする医療保険の仕組みは、今も昔もさして変化していません。
医療保険全体としては、変化している部分より、変化していない部分の方が、ずっと大きいです。
新しい医療保険に入り直すと、これまでと変化していない部分の保険料も、現在の年齢をもとに算出されるので、高くなります。末端の保障を最新にするために、今でも通用する本体部分の保険料まで、値上がりしてしまいます。
アフラックの医療保険『医療保険EVER Prime』を例に、入院給付金と手術給付金だけというシンプルな保障の、年齢別の保険料をご覧ください。
年齢 | 月々の保険料 |
---|---|
30歳 | 2,840円 |
40歳 | 3,390円 |
50歳 | 4,980円 |
60歳 | 7,430円 |
保険会社にとっては、同じ保障を提供して、もらえる保険料が増えるから、大歓迎です。だから、保険の見直しを勧めます。
しかし、消費者にとっては、損が多くなります。
保険を理解していないか、保険を売りつけたい
雑誌やウェブ上の、医療保険についての情報には、将来見直すことを前提にアドバイスしているものが、散見されます。
あるいは、保険の営業員や専門家から、そのような助言を受けることもあるでしょう。
そういうアドバイス・助言をする人たちは、本当の意味で保険をわかっていないか、あなたに保険を売りつけようとしている、と見なしてください。要警戒です。
長く使うために、そのときどきの治療法に左右されない保障内容にしましょう。
長く使える保障にするためには、そのときどきの、治療の実態を踏まえた保障を、できるだけ取り除きたいです。
そういう保障は、優れているように見えますが、年月の経過とともに、古くなりやすいです。
最新であることをアピールする広告に注意
たとえば、以下のような宣伝には要注意です。ただちに却下することはありませんが、用心深く中身をチェックしたいです。

現在の医療に対応していること自体は、良いことです。しかし、あまりにもきめ細かいと、年月の経過とともに、どんどん古くなります。
特に、特約の名称に具体的な治療法が入っている給付金には注意が必要です。ホルモン剤治療給付金とか、免疫療法給付金とか・・・
保険金が出る条件が、細かい商品は要注意
たとえば、ある保険会社の医療保険の三大疾病一時金特約では、一時金が出る条件が、以下のようになっています。
- がん ・・・ がんと診断が確定すること。
- 心疾患 ・・・ 心疾患で、継続して20日以上入院したとき。
- 脳血管疾患 ・・・ 脳血管疾患で、継続して20日以上入院したとき。
心疾患と脳血管疾患の、継続して20日以上という条件は、なかなかきめ細かいです。
この20日という設定は、現時点での医療の実態には合っているかもしれません。しかし、医療技術が急速に進歩する中で、10年後20年後に、20日という期間が通用するかは不明です。もしかしら、まったくの役立たずになってしまうかもしれません。
この種の特約を付けるなら、「心疾患か脳血管疾患で入院すること」くらいの商品をお勧めします。これだったら、長く使えそうですから。
基本は、入院給付金と、支払い条件のシンプルな一時金を、手厚くする
長く使える保障にするなら、こまごまとした特約を付けるより、保険の基礎部分を分厚くしましょう。つまり、
- 入院給付金日額を、高い金額にする。
- 支払い条件のシンプルな一時金特約を付ける。
シンプルな支払い条件とは、「~で入院したら」「~で治療を開始したら」「~と診断されたら」「~で手術を受けたら」くらいです。
このくらいにしておけば、10年後20年後でも、通用するでしょう。
将来の新しい保険には、追加加入で対応する
医療技術は急速に進歩しています。それに対応した魅力的な保険が、将来登場するかもしれません。
そういうときは、まるまる他の医療保険に入り直すのではなく、追加したい保障だけを、単体の保険商品に新規加入する、という方針にしましょう。
そんな保険商品が、都合よく発売されるかはわかりませんが、まずは探してみましょう。
細かい支払い条件をチェックしながら、医療保険を選ぶなら、保険の専門家を上手に活用しましょう。
「ご契約のしおり」や「約款」などを読めば、上でご説明したことは、確認することができます。
とは言え、一般の消費者が、複数の医療保険を検討しつつ、それぞれの「ご契約のしおり」や「約款」を調べるのは、けっこうな労力です。
疑問がわいて、検討が滞るかもしれませんし、理解を誤ったまま決断してしまうかもしれません。
医療保険は、一生付き合うかもしれませんから、加入時点での誤解や判断ミスは、何としても避けたいです。
そこで、保険の専門家の活用を、お勧めします。その方法は
賢い生命保険の入り方
をご覧ください。
もし、相談した保険の専門家が、「将来見直すことを前提に」という考えの持ち主だったら、初めの段階で、こちらの方針をしっかり伝えてください。