通院治療は、医療保険の対象外
医療保険は、原則として、入院の治療費用を保障します。通院の治療費のほとんどで、給付金・保険金は出ません。
医療保険は、原則として、入院の治療費を保障する保険です。通院治療のほとんどは、保障の対象外となります。
そうなっている理由は2つあります。
1つは、入院の方が、短期間のうちにまとまった出費が発生しやすいこと。2つめは、治療に必要不可欠な通院と、気休めの通院との区別が難しいことです。
もっともな理由があるとしても、わたしたち消費者の立場からすると、医療保険が通院治療をカバーしないことは、心配になります。
一度にまとまった出費は生じないとしても、通院の治療費用を合計すると、けっこうな金額になるかもしれません。
たとえ医療保険に加入しても、通院治療のための資金を、別に確保しなければなりません。
厚生労働省『医療保険に関する基礎資料』(平成25年)によると、年齢層別の医療費の、入院と外来(=通院)の割合は、グラフのようになっています。

若いうちは入院の割合が低いのは予想通りです。とは言え、日本人の平均寿命に近い80歳台の中ごろでも、入院の割合が外来を上回るものの、ほとんど同じです。
外来(=通院)の治療費は、医療保険の対象外ですから、預貯金など手持ちのお金から支出することになります。たとえ医療保険に加入しても、通院治療のための資金を別に準備しなければなりません。
三大疾病、七大生活習慣病のような大きな病気でも、通院で治療に取り組む患者の数は多いです。
通院で治療する病気として、すぐに思い浮かぶのは、カゼとか、虫歯とか、視力の矯正とか。そのくらいであれば、治療費の準備を心配する必要は無さそうです。
通院で治療する病気の中で、治療費の準備を心配しなければならない病気には、どんなものがあるのでしょうか?
そこで、厚生労働省『患者調査』(平成26年)をもとに、日本人がかかりやすい主な病気の、通院患者数と入院患者数のランキングです。
患者数の多い方を赤文字にしています。
順位 | 病名 | 通院患者数 | 入院患者数 |
---|---|---|---|
1位 | 高血圧性疾患 | 671,400人 | 6,400人 |
2位 | 歯肉炎・歯周病 | 444,700人 | 200人 |
3位 | う蝕(虫歯) | 283,600人 | 100人 |
4位 | 糖尿病 | 222,300人 | 20,900人 |
5位 | 悪性新生物(がん) | 171,400人 | 129,400人 |
6位 | 高脂血症 | 143,700人 | 300人 |
7位 | 心疾患 | 133,900人 | 59,900人 |
8位 | 喘息 | 127,600人 | 3,800人 |
9位 | 慢性腎不全 | 107,300人 | 24,100人 |
10位 | 脳血管疾患 | 94,000人 | 159,400人 |
11位 | 骨折 | 92,000人 | 91,400人 |
12位 | 気分(感情)障害 | 83,400人 | 28,800人 |
13位 | 統合失調症など | 69,700人 | 165,800人 |
14位 | アルツハイマー病 | 45,100人 | 47,000人 |
15位 | 肝疾患 | 32,600人 | 800人 |
この表を見て、気になったところを、以下に書き出します。
三大疾病に、通院で取り組む可能性は高い
日本人がかかりやすい7つの大きな病気を、七大生活習慣病などと呼びます。その中でも、生死にかかわる3つの病気を三大疾病と呼びます。悪性新生物(がん)、心疾患、脳血管疾患の3つが三大疾病です。
表の通り、三大疾病のうち、悪性新生物(がん)と心疾患の2つは、通院患者数が入院患者数を、万の単位で上回っています。三大疾病のような重い病気であっても、通院で治療に取り組む可能性はかなり高い、と言えそうです。
七大生活習慣病は、通院治療が圧倒的に多い
三大疾病以外の、七大生活習慣病の4つは、高血圧性疾患、糖尿病、慢性腎不全、肝疾患ですが、表の通り、通院で治療に取り組む患者数が、ケタ違い(10倍以上の差)に多くなっています。
医療保険の三大疾病や七大生活習慣病の特約は、入院が前提
医療保険には、三大疾病や七大生活習慣病のときに、保障を手厚くする特約が用意されています。しかし、その多くは、入院を前提としています。
通院給付金や一時金が出る特約であっても、お金が出る条件が入院だったりします。入院前後の通院のみ保障されるとか、入院することを条件に一時金が出るとか・・・
残念ながら「医療保険に加入したから、三大疾病や七大生活習慣病への備えは万全」などとはとうてい言えないようです。
将来の医療費の準備は、医療保険と預貯金の、二段構えで準備しましょう。
預貯金で将来の医療費を準備できれば、必要に応じて、通院費用にも、入院費用にもお金を回すことができます。
ただし、まとまった金額が貯まるまでに時間がかかります。また、想定より費用がかかったら、足りなくなるかもしれません。
医療保険に加入すれば、加入後すぐの入院でも、給付金や保険金を受け取ることができます。その給付金や保険金は、限度は設けられていますが、たいていの病気・ケガの入院期間をカバーできてしまいます。
その一方で、医療保険からお金を受け取るには、保険契約に定められた条件をクリアしなければなりません。現実には、通院治療のほとんどのケースで、医療保険を頼りに出来ません。
つまり、預貯金と比べると、融通はあまり利きません。
預貯金と医療保険の長所短所を踏まえたうえで、両方を組み合わせて、上手に使いこなしたいものです。
預貯金と医療保険の組み合わせを検討し、適切に商品やサービスを選ぶには、家計や保険の専門家を上手に活用しましょう。
上に書いたとおり、預貯金と医療保険を組み合わせて、上手に使いこなすのが理想です。
ただし、それをやるためには、医療費のこと、健康保険制度や高額療養費制度のこと、年金制度(障害年金)のこと、国や地方自治体の支援制度のこと、企業の福利厚生制度のこと、保険の仕組みなど、いろいろと知識が必要になります。
その一つ一つを勉強するのは、かなりの時間と能力が必要になります。また、勉強したからといって、適切に判断できるとは限りません。
また、預貯金と医療保険の配分が決められたとしても、具体的にどんな商品やサービスを使って、お金を積み立てたり、保障を準備するのかで、悩んでしまいそうです。
家計や保険の専門家を上手に活用することをオススメします。そのための手軽で安心な方法は、
賢い生命保険の入り方
をご覧ください。