収入保障保険の必要性と仕組み
収入保障保険は、世帯主が亡くなったときに備える、子育て世帯のための死亡保険です。
収入保障保険という名称は、ちょっとまぎらわしいです。
病気やケガによる、収入減に備える保険のようにも、思えてしまう名称です。
収入保障保険は、世帯主が亡くなったときの、遺族のための死亡保険です。
収入保障保険は死亡保険
収入保障保険は、あくまでも死亡保険で、終身保険や定期保険に近い保険です。被保険者(保険をかけられている人)が亡くなったときに、遺族にお金を残すための保険です。
名称に「収入」という言葉が入っている理由は、保険金(保険から出るお金)を、まるでお給料のように、毎月受け取ることができるからです。
ちなみに、終身保険や定期保険のような死亡保険では、保険金は一時金で支払われます。
収入保障保険でも、保険金を一時金として、まとめて受け取ることは可能です。ただし、一時金にすると、受け取る金額の合計は、少し減ります。
収入保障保険は、掛け捨て保険
収入保障保険は、定期保険に似た、掛け捨ての死亡保険です。
掛け捨て保険ということは、保障される期間が、限定されています。60歳までとか、65歳までというように。
その期間を無事に過ごすことが出来たら、保険は消滅して、払い込んだ保険料は、それっきりになります。
こう書くと、損な保険のように思えるかもしれません。
しかし、ある意味、掛け捨て保険こそ、保険らしい保険です。
掛け捨て保険が提供するのは、まさかのときでも、金銭的には乗り切れるという、安心感です。
収入保障保険は、一般的な子育て世帯にとっては、定期保険より合理的かつ経済的です。
掛け捨ての死亡保険、という点で、収入保障保険は、定期保険とキャラがかぶります。
定期保険を、子育て世帯向けに合理化
定期保険は昔からあって、現在でも、終身保険と並んで死亡保険の主流です。
保険契約で決めた期間中に、被保険者(保険をかけられている人)が亡くなったら、約束の保険金が一時金で出ます。
決められた期間が終わったら、保険契約は消滅します。
定期保険は、シンプルでわかりやすい保険ですが、一般的な子育て世帯の保険としては、弱点があります。
一般的な子育て世帯の必要保障額は、図のようなイメージで増減します。

ご覧のように、保険の必要保障額への影響が大きいのは、子供が経済的に自立するまでの養育費・教育費です。
子供の数が増えなければ、必要保障額は年々減少していきます。ところが、定期保険の保険金額は、保障される期間中一定のままです。
本来なら、保険金額は年々減少し、それに合わせて保険料も下げられるはずです。

簡単な手続きで、保険金額を減らすことはできます。ただし、毎年のように減額の手続きをするのは、現実的ではありません。
そこで、収入保障保険の登場です。
収入保障保険は、保険金額が自動的に調整される
収入保障保険は、保険としての基本部分は定期保険と共通していますが、一般消費者の目線に合わせた仕組みになっています。
具体的に、何が違うかというと・・・
- 定期保険 ・・・ 加入するときに、受け取る保険金額を決める。
- 収入保障保険 ・・・ 加入時に、毎月受け取る金額と、受け取る期間(〇〇歳まで)を決める。
というように、収入保障保険では、受け取る合計額は、固定ではありません。
早く亡くなったら、受け取る期間が長くなるので、受け取る累計額は多くなります。保障期間の終盤に亡くなると、逆に、受け取る期間は短くなり、累計額は小さくなります。
保険金の受取開始の時期が遅くなると、受取額の累計が少なくなって、損と感じるかもしれません。

しかし、その分、保険料を低く抑えることができます。ちゃんとした保障プランで加入していれば、合理的です。
世帯(人)によっては、収入保障保険を選ぶことに、デメリットがあります。
どんな保険にも言えることですが、保障内容が、加入者の置かれている状況やニーズとズレていたら、後悔することになります。
保険の場合、判断ミスに気づくのが、加入から年月が経過した後になりがちです。先々後悔しないように、慎重に検討したいです。
個人事業主・自営業者は慎重に
個人事業主・自営業者の世帯は、収入保障保険の仕組みがニーズに合っているかを、慎重に判断してください。
もちろん、子供の養育費・教育費だけなら、個人事業主・自営業者の世帯にも、収入保障保険はふさわしいです。
しかし、保険から出るお金の一部を、事業の整理や再建などに回すとなると、事情が変わります。
収入保障保険は、保険から出る金額がだんだん減少するので、資金不足になる危険があります。
いざというときの事業資金は、保険金額が一定の定期保険の方が安全です。
経理処理や税金対策にもかかわるので、保険の専門家に相談して、ご判断ください。

必要保障額が増えたら、すみやかに対応する
子供が増えるなど、世帯の状況が大きく変わると、保険の必要保障額も影響を受けます。
そうなったとき、保障の見直しが必要になるのは、収入保障保険に限りません。定期保険だって、見直しが必要になります。
ただし、受取額の累計が年々減っていく収入保障保険の方が、受取額の不足がより大きくなります。
ちなみに、必要保障額が増える原因になりがちなのは・・・
- 子供が増える。
- 子供の経済的独立が年単位で後ろにズレる。
- 転居などで、賃料が大幅に増える。
住宅ローンをくむことは、むしろ必要保障額を下げます(ローン契約の中で、団体信用生命保険に加入するので)。
よって、保険を見直すとしたら、保障を小さくして、保険料を安くできます。
収入保障保険と組み合わせる死亡保険は、終身保険です。それ以外の死亡保険とは、保障が重複するので、要注意です。
収入保障保険は、死亡保険です。よって、この他に、死亡保険に加入すると、保障が重複します。
特に、以下のような死亡保険との重複は避けたいです。
- 定期付終身保険(定期保険特約が付いている終身保険)
- アカウント型保険
- 組み立て型保険の定期保険
- 定期保険
理由があって、保険を重複させるときは、保険金額を調整する
後々の管理のしやすさを考えると、保険の重複は避けたいです。
とは言え、収入保障保険以外の保険が、かなり以前加入したので保険料が安く、解約はもったいない、というようなことはありえます。
そういうときは、重複する保険を合わせて、適切な保険金額になるように調整しましょう。
また、後々、保険金の請求漏れなど起きないように、保険証券などをしっかり管理しましょう。
死亡保険のうち、終身保険とは、うまく組み合わせたい
死亡保険のうち、終身保険は、収入保障保険との相性が良いです。組み合わせることで、お互いの弱いところを、埋め合わせることができます。
それぞれの長所短所を整理すると、下のようになります。
長所 | 短所 | |
---|---|---|
収入保障保険 | 大きな死亡保障を、割安な保険料で準備できる。 | 保障期間に限りがある(一生涯の保障にはならない)。 |
終身保険 | 一生涯の死亡保障を確保できる。掛け捨てにならない。 | 保険金額を大きくすると、保険料も無茶苦茶高くなる。 |
上図でご覧いただいたように、一般的な子育て世帯の保障には、ある期間だけ欲しい保障と、一生涯欲しい保障とがあります。
収入保障保険と終身保険をうまく組み合わせることで、両方の保障を、無理なくムダなく両立できます。

収入保障保険を、単体で販売している保険会社は、限られます。まずは、保険会社で候補を絞りましょう。
合理的でメリットの多い収入保障保険ですが、すべての保険会社が、単体の保険として販売しているわけではありません。
収入保障保険を、特約として、他の保険に組み込んでいる商品は少なくありません。こういう一体型、総合保障型、組み立て型の商品は、後になって保障を見直すときに、何らかの制約を受けて、望むとおりにならない危険があります。
収入保障保険は長く続けるものです。先々何があるかわからないので、単体の商品に加入しておきたいです。
また、生命保険の場合、セット商品に加入する方がおトク、ということはありません。
収入保障保険の、単体の商品
単体で販売されている、主な収入保障保険には、以下があります。
- アフラック『家族に毎月届く生命保険GIFT(ギフト)』
- オリックス生命『収入保障保険Keep(キープ)』
- ジブラルタ生命『家族収入保険』
- ソニー生命『家族収入保険』
- SOMPOひまわり生命『じぶんと家族のお守り』
- T&Dフィナンシャル生命『家計にやさしい収入保障』
- チューリッヒ生命『収入保障保険プレミアム』
- 東京海上日動あんしん生命『家計保障定期保険 NEO』
- マニュライフ生命『こだわり収入保障』
- 三井住友海上あいおい生命『&LIFE 新収入保障』
- メットライフ生命『マイディアレスト』
- メディケア生命『メディフィット収入保障』
単体で販売していない、知名度の高い生命保険会社
参考までに、収入保障保険を単体で販売していない、有名な生命保険会社を、あげておきます。
- 朝日生命
- かんぽ生命
- 住友生命
- 第一生命
- 大同生命
- 太陽生命
- 日本生命
- 三井生命
このように、収入保障保険を取り扱っていない保険会社も、多いです。
かんぽ生命や日本生命をはじめとした、伝統のある大手生保の名前が、ズラリと並んでいます。
歴史のある生命保険会社が、収入保障保険を単体で売りたがらないことには、理由があります。
わたしたち消費者の利益のために・・・ではなく、保険会社側の大人の事情です。
ただ、その説明はかなり専門的になるので、ここでは割愛します。
次のページでは、それぞれの商品を比較分析し、ニーズ別の、候補に加えていただきたい商品を、ご案内しています。