かんぽ生命『はじめのかんぽ』

かんぽ生命『はじめのかんぽ』

かんぽ生命『はじめのかんぽ』を、3つの角度から、徹底分析しました。

学資保険に期待するものは、人によって異なるかもしれません。

とは言え、学資保険の性能を評価するポイントとしては、次の3点は、ほとんどの人に当てはまると思います。

  • 返戻率
  • 保護者に何かあったときの保障
  • 学資金・満期金が出るタイミング

以下で、かんぽ生命の学資保険を、この3つの切り口でご案内し、評価します。

以下は、関連する事項について取り上げているページです。併せて閲覧いただければ幸いです。

かんぽ生命『はじめのかんぽ』は、元本割れする危険性が高いです。候補から外しましょう。

返戻率とは、貯蓄型保険の利回りを表す言葉です。保険業界特有の考え方です。

計算方法は簡単です。払い込んだ保険料の総額を100%として、受け取る学資金の総額を%で表したのが返戻率です。

受け取る金額のほうが、保険料総額より大きいとき、返戻率は100%より大きくなります。もちろん、数字が大きいほど高利回りです。

ただし、返戻率には、重大な注意点が2つあります。

  • 単一の商品でも、見積もり条件を変えると、返戻率は変動する。
  • 返戻率を、銀行など他の金融機関の商品と、利回りを比較できない。

単一商品でも、見積もり条件や保障プランの内容を変えると、そのたびに返戻率が変動します。

「○○生命の学資保険の返戻率は△△△%です」というような言い方はできません。

もっとも、利回りの良い学資保険は、どんな見積もり条件でも、それなりに良い返戻率になります。だから、ある見積もり条件で返戻率が良好であれば、利回りの良い商品と判断できます。

ただし、利回りの差が小さいときは、見積もり条件や保障プランによって、優劣が入れ替わります。実際に見積もりをしないと、どちらが優れているか決められません。

かんぽ生命『はじめのかんぽ』の返戻率

『はじめのかんぽ』には、3つのプランが用意されています。

ここでは、かんぽ生命が提供している見積もりシミュレーションを使って、それぞれのプランの返戻率を算出しました。

同じような内容の他社商品があれば、それの返戻率も、参考として併記しました。

大学入学前に、学資金を一括受取するときの返戻率

まず、もっともシンプルな、大学入学前(17歳または18歳)に、一括して学資金を受け取るプランです。

かんぽ生命『はじめのかんぽ(18歳満期)』のイメージ図

次の見積もり条件で、返戻率を比較します。

  • 子ども0歳
  • 契約者:父親30歳
  • 学資金:18歳のときに一括して受け取る
  • 特約:なし

保険料払込期間は、「18歳まで」と「12歳まで」の、2通り見積もりました。

保険料
払込期間
返戻率
かんぽ生命 18歳 94.9%
12歳 97.0%
【参考】
ソニー生命
18歳 101.9%

かんぽ生命は、2つの見積もりとも返戻率100%以下です。つまり、払う金額よりもどる金額の方が少ないです。

たとえば、学資金を300万円受け取るために、保険料を合計3,162,240円払い込みます。

約16万円の赤字になります。

返戻率は、保険料払込期間を短縮するほど、高くなる性質があります。

かんぽ生命の場合も、12歳までの方が、返戻率は上昇しましたが、それでも100%に届きません。

ちなみに、同じプランで、ソニー生命なら、18歳までの払込でも、返戻率は100%を超えます。増えて戻ってきます。

小・中・高・大の入学前受取プランの返戻率

保険期間が18歳までで、小学校・中学校・高校・大学に入学前に、合計4回学資金を受け取るプランです。

かんぽ生命『はじめのかんぽ(学資祝金付18歳満期)』のイメージ図

こまめに学資金が出るので、使い勝手は良いです。

しかし、早くから学資金が支払われるので、上の18歳で一括で受け取るプランより、返戻率は確実に悪化します。

  • 子ども0歳
  • 契約者:父親30歳
  • 保険期間:18歳満期
  • 学資金:小学校、中学校、高校、大学の、それぞれ入学前に受け取る

保険料払込期間は、「18歳まで」と「12歳まで」の、2通り見積もりました。

保険料
払込期間
返戻率
かんぽ生命 18歳 94.4%
12歳 96.9%

上の、大学入学前に1回受け取るプランより、返戻率は少し下がりました。

大学入学前〜在学中受取プランの返戻率

1年あたりの学費が最も高くなるのは、通常は大学です。

最終学歴だけに、経済的理由で志望を曲げなくてもよいように、しっかり準備したいです。

そこで、大学の学費準備に特化したプランです。

かんぽ生命『はじめのかんぽ(学資祝金付21歳満期)』のイメージ図

返戻率は、お金を受け取る時期が遅くなるほど、高くなる性質があります。

よって、このプランの返戻率は、上の2つより高くなります。

  • 子ども0歳
  • 契約者:父親30歳
  • 保険期間:21歳満期
  • 学資金:大学入学前・2年次・3年次・4年次の、計4回。

保険料払込期間は、「18歳まで」と「12歳まで」の、2通り見積もりました。

保険料
払込期間
返戻率
かんぽ生命 18歳 95.4%
12歳 97.5%
【参考】
日本生命
18歳 104.0%

上の2つのプランより高くなりましたが、それでも、かんぽ生命の返戻率は100%を超えません。

日本生命のプランは、かんぽ生命のものと、少し違います。

学資金の出る回数が『はじめのかんぽ』より1回多く、合計5回です。その分、契約期間も1年長くなります(図は、100万円プランのイメージ図)。

日本生命『ニッセイ学資保険』の保障のイメージ図

5回めは学資金というより卒業祝いです。これを無くして、かわりに保険料を下げてくれた方が、ありがたいかもしれません。

ただし、5回のうち、最もお金がかかるであろう初回に倍額もらえるのは、実用的です(『はじめのかんぽ』は4回とも同額)。

そして何よりも、約104.0%という日本生命の返戻率が決定的です。

かんぽ生命『はじめのかんぽ』は、貯蓄としては機能しない

ここまでに3パターンの返戻率をご覧いただきましたが、返戻率は一度も100%を超えませんでした。

特約を付けない、貯蓄部分だけの返戻率が100%を下回っています。

特約を付けたら、返戻率は90%より低くなりそうです。

学資保険としては機能しません。タンス預金の方が、減らないだけまだマシです。。

かんぽ保険『はじめのかんぽ』は、“こども保険”に近い

ところが、これと同じような保険商品は、他にも少なくありません。

ただし、学資保険ではなく、こども保険という名称で販売されています。

子どもに役に立ちそうな保険をひとまとめにした、パッケージ型の商品です。当然、学資保険も組み込まれています。

図は、三井住友海上あいおい生命『&LIFE こども保険』100万円プランのイメージ図です。

三井住友海上あいおい生命『&LIFE こども保険』の商品イメージ

「お祝い金(教育費用)」「養育年金(親が亡くなったとき)」「医療保障(子の入院・手術の費用)」の3つの保険が組み込まれています。

このうち「お祝い金」が学資保険に相当します。

図のプランの返戻率は約68.1%にしかなりません。「養育年金」「医療保障」は掛け捨て保険(貯蓄保険と正反対)なので、当然の結果です。

そもそも、この返戻率はこのサイトで算出したもので、三井住友海上あいおい生命のウェブサイトでは、返戻率の記載がありません。

そもそも、利回りで勝負するつもりはない、ということのようです。

このように、こども保険は、お金は出るけれど、貯蓄ではない保険です。

かんぽ保険『はじめのかんぽ』は、ウェブサイトやパンフレットには“学資保険”となっていますが、《こども保険》に近いです。

特約を付加して、上の『&LIFE こども保険』と同じようにするのが、『はじめのかんぽ』の正しい使い方かもしれません。

もっともこのサイトでは、

《こども保険》をお勧めしていません。

かんぽ生命『はじめのかんぽ』の医療特約に、これといったメリットはありません。

かんぽ生命『はじめのかんぽ』には、以下の特約を付加できます。

  • 災害特約(不慮の事故による死亡や身体障害のときに一時金が出る)
  • 傷害医療特約(不慮の事故による入院費用・手術代などを保障)
  • 総合医療特約(病気・ケガによる入院費用・手術代などを保障)
  • 先進医療特約(先進医療の費用を保障)

この中で、かんぽ生命のおすすめプランで付加されているのが総合医療特約です。

この特約は、入院日数に応じた入院保険金のほかに、手術や放射線治療を受けると1回毎に一時金が出ます。

シンプルな医療保険として通用する保障内容です。

子どものための医療保障が欲しくて、『はじめのかんぽ』を検討されている方がいるかもしれません。

しかし、それはお勧めできません。

医療費が心配なのは、入院より通院

総合医療特約にせよ、『はじめのかんぽ』の他の特約にせよ、治療を受けるだけで保険金が出るわけではありません。

入院したり、手術や放射線治療を受けないと、保険金は出ません。

ところが、学資保険の対象となる年代は、すべての年代の中で、入院する可能性が最も低いです。

グラフは、厚生労働省『患者調査』(平成29年)と総務省『人口統計』をもとに、年齢層別の入院する確率を表しています。

年齢層別の入院する確率

赤枠で囲んでいるのが、こども保険の対象年齢です。

0歳は出産に伴うトラブルのせいで、多くなっています。しかし、1〜19歳の入院する確率はとても低く、0.1%前後です。

では、これらの年代に医療費の心配は不要かというと、そんなことはありません。子どもの通院は、少なくありません。

同じ統計データをもとに、今度は年齢層別の通院する確率をグラフにしました。

年齢層別の通院する確率

10歳を過ぎると、20〜30代と同レベルまで低くなっています。

しかし、10歳未満の間は、高齢者ほどではないとしても、通院する確率は親より多いです。

この2つの結果をまとめると

学資保険の対象年代は、通院レベルの病気・ケガは多いが、入院する可能性は低い。

と言えそうです。

15歳までは公的支援を受けられる

ほとんどの市区町村に子ども医療費助成制度があり、医療費用を支援してくれます。

助成の内容は市区町村によって差がありますが、15歳までの子どもが医療機関で治療を受けたら、保険適用の自己負担分の全部または大半が免除されます。

しかも、入院だけでなく、通院費用も助成の対象になります。

この制度を利用すね前提なら、

各世帯で、15歳までの子どもの医療費として、特別な準備することはなさそうです。

子どもの医療保障を検討するなら、15歳以降で十分に間に合います。

そのとき検討する保険は、こども保険ではなく(15歳ではほとんど加入できない)、医療保険などです。

学資保険の医療特約より医療保険

学資保険の対象の年代は、入院する確率が低いです。とは言え、ゼロではありません。

起こる確率が低いから対策は不要と言い始めたら、そもそも生命保険自体、必要なくなるかもしれません。

もし、子どものために医療保障を準備するなら、学資保険の医療特約ではなく、単体の医療保険をお勧めします。

その理由は、以下のとおりです。

  • 学資保険の医療特約は、満期になったら必ず消滅する。
  • 医療特約と単体の医療保険で、保険料に差はない。

医療保険のほうが、使い勝手が良い

上のグラフでご覧いただいたように、入院する確率が上がるのは成人して以降です。

せっかく加入するなら、学資保険の満期(18歳とか22歳)以降も続けられるようにしておきたいです。

続けるかどうかの判断は20歳前後にするとしても、どちらでも選べるような入り方をしておきたいです。

たとえば、子どもが就職するまでは親が契約者(保険料の負担者)となって、就職後は契約者を子どもに変更することも可能です。

医療保険の保険料は、原則として、早く加入するほうが安くなります。

契約者を子どもに移すとしても、かなり安い保険料で譲れるので、ちょっとしたプレゼントになります。

満期になったら消滅する医療特約より、単体の医療保険のほうが使い勝手が良いです。

医療特約と単体の医療保険で、保険料に差はない

もしかしら、単体の医療保険より医療特約の方が、保険料が安いとお考えかもしれません。

あるいは、かんぽは安い、というイメージをお持ちかもしれません。

しかし、どちらも正しくありません。昔はそうだったかもですが、現在は違います。

『はじめのかんぽ』の総合医療特約と、アフラックの医療保険『医療保険EVER Prime』の保険料を比較しました。

どちらも保障の項目(入院保険金、手術保険金、放射線治療保険金)は同じです。ただし、細部に違いはあります。

かんぽ生命 アフラック
加入年齢 0歳
保障の期間 18歳まで 一生涯
入院給付金日額 4,500円 5,000円
月払保険料 1,050円 997円

アフラック『医療保険EVER Prime』の方が、入院給付金日額(入院1日あたりに出る金額)が大きいにもかかわらず、保険料は安くなりました。

アフラックの医療保険は終身保障なので、18歳で止めることもできるし、同じ保険料のまま継続することも可能です。

売れている医療保険の一つということでアフラック『医療保険EVER Prime』を引き合いに出しましたが、他にもっと安い医療保険が見つかるかもしれません。

このように・・・

『はじめのかんぽ』の総合医療特約より、単体の医療保険を検討するほうが、割安だし可能性が広がります。

保険期間中に保護者が亡くなったとき、以後の保険料の払込は免除されます。この機能は、他社の学資保険にも備わっています。

普通預金の金利は、2019年7月現在0.001%と最低水準ですが、それでも減ることはありません。

ところが、かんぽ生命『はじめのかんぽ』に入ると、お金が減って戻ってしまいます。

超低金利・マイナス金利の時代なので、運用利回りが低いのはしかたがないとしても、お金が減る商品を、学資保険として堂々と販売する姿勢に疑問を感じます。

ただし、学資保険としてのメリットが、まったくないわけではありません。

保険料払込期間中に契約者(親)が亡くなると、以後の保険料払い込みが免除されます。もちろん、学資金は満額もらえます。

銀行などの預貯金にこういう機能はないので、学資保険ならではのメリットです。

もっとも、他社の学資保険にも、この機能は備わっています。

かんぽ生命『はじめのかんぽ』ならではのメリット、というわけではありません。

保険料払込免除があっても、学資保険の間では、強みにならないのですね・・・

かんぽ生命『はじめのかんぽ』より、もっとお勧めの保険商品があります。あわせてご検討ください。

ここまでご説明したように、かんぽ生命『はじめのかんぽ』はお勧めできません。

気になった点を整理すると・・・

  • 貯蓄部分(教育資金の準備)の利回りが元本割れ
  • 総合医療特約より単体の医療保険のほうが、おトクで値打ちがある。

かんぽ生命『はじめのかんぽ』をご検討の方に、比べていただきたい商品やプランを、ご案内します。

学資保険、医療保険など、目的別に別々に加入する

教育資金を貯めるという目的がある以上、せめて返戻率が100%を超える学資保険を選びましょう。

医療保障が必要なら、単体の医療保険を検討しましょう。ほとんどの商品は、0歳から加入できます。

また、万が一世帯主が亡くなったときの、子どもの養育費が気になるときは、収入保障保険など専用の保険を検討しましょう。

『はじめのかんぽ』以外にも、返戻率が100%に達しない商品がいくつかあります。くれぐれもご注意ください。

教育資金を、保険以外でも貯める

返戻率の良好な学資保険であれば、銀行の預貯金など元本保証のある金融商品より、利回りは優れています。

また、学資保険は確定申告をすれば、所得税の生命保険料控除を受けられます。

他の金融機関の貯蓄商品は、利子・配当の約20%が所得税として差し引かれます。

学資保険なら、生命保険料控除の条件をクリアすれば、この税金が免除されます。

ただし、学資保険には弱点もあります。

学資保険の利回りは固定です。加入した時点の利回りが、満期まで維持されます。

今加入すると、 超低金利である現時点の利回りがずっと続きます。

もし、近い将来(20年以内くらいのうちに)、世間の金利が上昇したら、損をした気分になるかもしれません。

そういうケースを考えると、学資保険一本で行くより、他の貯蓄方法も組み合わせたほうが、安心かもしれません。

いずれにしても、個人で調べられることには限りがあります。

家計や保険の専門家に相談のして判断されることを、お勧めします。

保険のプロに相談するなら、中立性が高く、商品を比較できるところを選びましよう。

わかりにくい保険だからこそ、中立な立場で助言してくれるプロに相談したいです。

保険ショップか独立系FP

保険を販売する人たちを、中立性と商品知識の2つの角度から分類したのが下の図です。

商品知識 保険ショップ 独立系FP 銀行窓口 一般の保険代理店 保険会社の直営 店または営業

お勧めしたいのは、赤い文字の「保険ショップ」または「独立系FP」です。ここでの「保険ショップ」は、全国チェーンかそれに近い規模のものを指します。

保険ショップ
  • 取り扱う保険会社数がもっとも多く、中立性は高い。
  • 各社の商品についてよく知っているが、保険・家計の知識は店舗による。
独立系FP
  • 複数の保険会社の商品を取り扱うので、中立性はそこそこ高い。
  • 各社の商品についてよく知っており、保険・家計の知識もある。

担当の人が公正な人柄で、勉強熱心であっても、こちらに勧めてくるのは自分が販売できる商品です。結局はかたよってしまいます。

また、販売できない商品については、保障プラン設計や見積作成の機会がないので、商品知識が深まりません。

できるだけ多くの保険会社の商品を取り扱えるプロに相談するのが無難です。

お勧めしたい保険のプロはこちら

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