共済も検討すべき?
共済には、都道府県民共済、全労済(こくみん共済)、JA共済などがあり、それぞれが生命保険と同じような保障を取り扱っています。
共済には、いろいろと種類があります。身近なところで、都道府県民共済、全労済、JA共済。この3つは、誰でも加入できます。その他に、業界ごとの共済(電気通信共済会など)もあります。
そして、そのほとんどが、生命保険と同じような保障商品を販売しています。
共済は、それぞれの協同組合によって運営されています。法的にも、制度的にも、成り立ちも保険会社とは異なります。
ただし、わたしたちが知っておきたいことは、以下の点でしょう。
- 生命保険の保険料のことを、共済では掛金と表現する。
- 生命保険の配当のことを、共済では割戻金と表現する。
- 保険会社が破綻したときは、生命保険会社保護機構が加入者を守ってくれる。共済には、そのような仕組みはない。
誰にとっても身近な存在である、都道府県共済、全労済、JA共済の3つについて、個別に見ていきます。
都道府県共済は、現役世代(60歳まで)重視の商品ラインナップ。安い掛金は魅力だが、老後になると、保障はだんだん薄くなる。
都道府県共済の代表として、都民共済を例にとります。
終身保障(一生涯の保障)の商品がない
都民共済の生命共済は、下表のようなラインナップになっています。
保障期間 | |
---|---|
こども型 | 0歳~18歳 |
総合保障型(熟年型に継続) | 18歳~85歳(65からは熟年型) |
入院保障型(熟年入院型に継続) | 18歳~85歳(65からは熟年入院型) |
保障は85歳まで、というのが微妙です。日本人の平均寿命は男性80.21歳、女性86.61歳(いずれも2013年)なので、女性の平均寿命より短くなっています。
ということは、生きているうちに、保障が無くなってしまう人が、かなりいることになります。
これが、掛金の安さの秘密です。
60歳以降、保障がじょじょに薄くなる
やはり都民共済の、入院保障型生命共済を例にとります。都民共済の、医療保障の主力商品です。
85歳まで、月の掛金が一律(年齢に関係なく)2,000円というのは、割安感があります。そのかわり、入院費用の負担が増えるであろう老後に、保障はドンドン薄くなります。
年齢 | 入院1日あたり | 保障される
入院日数 |
---|---|---|
~60歳 |
10,000円
|
124日
|
~65歳 |
7,500円
|
124日
|
~70歳 |
5,000円
|
124日
|
~80歳 |
3,500円
|
44日
|
~85歳 |
2,000円
|
44日
|
85歳以降 |
なし
|
なし
|
老後の医療保障を望む方々にとっては、不安な保障内容です。
加入するなら、70歳以降の保障はオマケ、と割り切った方が良さそうです。
後期高齢者になって、自己負担額が減るとは限らない
日本には高額療養費制度や後期高齢者医療保険があって、高齢になるにつれて、医療費の自己負担は低くなります。都民共済の医療保障が、上の表のようにだんだん薄くなる根拠は、そこにあるのでしょう。
しかし、自己負担割合は低くなっても、入院する確率は、高齢になるにつれて、どんどん上がります。
上のグラフは、厚生労働省『患者調査』(平成26年)をもとに、同世代の中での入院者の割合を、年代別に表しています。40歳台以降、着実に入院するリスクは上がっていきます。
これだけではありません。
同じ調査結果をもとに、入院1回あたりの在院日数も、高齢になるにつれて、だんだん長くなります。
70歳以降は、着実に長くなっいることが、見て取れると思います。
以上のことから、公的医療制度のおかげで、自己負担割合が減ると言っても、それによって実際の出費が減ると考えるのは、楽観的ではないでしょうか。
せいぜい、公的医療制度のおかげで、自己負担額は増えない、くらいに考えるくらいが、ちょうど良いです。
全労済は、現役世代(60歳まで)重視で、すっきりとわかりやすい商品内容。ただし、掛金(保険料)は、そんなに安くはありません。
全労済の、生命保険系の主力商品といえば「こくみん共済」です。何と25ものコースに分かれています。
そのほかにも、「新せいめい共済」が2コース、「いきいき応援」が1コースと、充実のラインナップです。
掛金(保険料)は、損保系生保・カタカナ生保より高い
数ある全労済の中から、「こくみん共済」の『終身医療5000』と「新せいめい共済」の『終身生命プラン』の掛金を、オリックス生命の同等の保険商品と比べてみましょう。
全労済の掛金は、さほど安くはありません。
全労済『終身医療5000』 vs オリックス生命『新CURE』
終身医療保障、入院日額5,000円、女性での掛金(保険料)の比較です。
加入年齢 | 全労済
『終身医療5000』 |
オリックス生命
『新CURE』 |
---|---|---|
30歳 |
2,290円
|
1,707円
|
40歳 |
2,950円
|
2,022円
|
50歳 |
4,020円
|
2,772円
|
全労済『終身生命プラン』 vs オリックス生命『RISE』
終身死亡保障、死亡保険金500万円、保険払込60歳まで、女性での掛金(保険料)の比較です。
加入年齢 | 全労済
『終身生命プラン』 |
オリックス生命
『RISE』 |
---|---|---|
30歳 |
11,450円
|
8,495円
|
40歳 |
17,650円
|
13,810円
|
50歳 |
36,050円
|
30,355円
|
明らかに全労済の方が高いです。
保険料(掛金)の安さを重視して保険を探すなら、全労済を候補に加える必要は無さそうです。
JA共済は、ほとんどがセット商品。掛金(保険料)は、そんなに安くはありません。オススメできません。
JA共済の商品ラインナップはとても充実しています。終身共済、一時払終身共済、医療共済、引受緩和型定期医療共済、がん共済、介護共済、予定利率変動型年金共済、養老生命共済、一時払養老生命共済、こども共済、定期生命共済など一通りの保障がそろっています。
商品の仕組みは、国内大手生保と似ています。
たとえば『終身共済』は、定期付終身保険そのものです。いわゆるセット商品です。オススメできません。
また、死亡保険と医療保険のセット販売を、積極的に進めているようです。
ついつい不要な共済にまで加入させられそうで、心配になります。
掛金(保険料)は、そんなに安くはない
JA共済の『医療共済』と『定期生命共済』を、損保系生保・カタカナ生保の同等の商品と比較します。
JA共済の掛金は、さほど安くはありません。
JA共済『医療共済』 vs メットライフ生命『やさしくそなえる医療保険』
10年間の定期医療保障、入院日額10,000円、男性での掛金(保険料)の比較です。
加入年齢 | JA共済
『医療共済』 |
メットライフ生命
『やさしくそなえる医療保険』 |
---|---|---|
30歳 |
2,549円
|
2,087円
|
40歳 |
3,259円
|
2,767円
|
50歳 |
5,279円
|
4,407円
|
JA共済『定期生命共済』 vs オリックス生命『BRIDGE』
30歳~60歳までの30年間の定期死亡保障、死亡保障額1,000万円の掛金(保険料)の比較です。
加入年齢 | JA共済
『定期生命共済』 |
オリックス生命
『BRIDGE』 |
---|---|---|
男性 |
8,350円
|
3,464円
|
女性 |
5,000円
|
2,033円
|
定期保険(定期共済)は、掛金(保険料)の差が出やすい傾向があります。男女とも、2倍以上の差が付きました。
60歳までの保障を重視するなら、都道府県民共済は候補に加えたい。一生涯、老後の保障まで含めて考えるなら、共済は候補から外しても、良さそう。
60歳までの保障をお求めであれば、都道府県民共済の掛金(保険料)の安さは魅力です。掛金(保険料)が一律なので、特に40~50代の方にとっては、割安感が高いでしょう。
また、都道府県共済は、都道府県によって異なりますが、割戻金(生命保険の配当)があります。都民共済なら、支払った掛金の30%くらいが戻ってくるようです。
「共済は安い」というイメージは、都道府県共済によるところが大きいようです。
全労済やJA共済の掛金は、それほど安くはないようです。
一生涯の保障、老後の保障として保障を考えると、共済にはそれぞれ弱点があります。
損保系生保・カタカナ生保にしぼって検討しても、問題無さそうです。