三大疾病の入院に備える
三大疾病の入院日数と、入院1日あたりの医療費を調べました。
三大疾病は、健康面で大きな脅威ですが、治療費の確保という点でも心配です。特に、入院すると、まとまった支出が発生します。
そこで、三大疾病の一般的な入院費用を調べました。
三大疾病の入院日数
厚生労働省『患者調査』(平成26年)より、三大疾病の平均入院日数を抜き出します。
病名 | 平均入院日数 |
---|---|
脳血管疾患 | 89.5日 |
心疾患 | 20.3日 |
がん(悪性新生物) | 19.9日 |
全病気・ケガの平均 | 31.9日 |
心疾患とがん(悪性新生物)の平均入院日数は、病気・ケガ全体の平均よりも短いです。それに対して、脳血管疾患は、平均の入院期間が約3ヶ月と、圧倒的に長くなっています。
三大疾病はどれも、1回の入院で完治するとは限らないし、再入院の危険性がある病気です。だから、入院日数の長さだけで、病気の重さを判断することは出来ません。
とは言え、入院1回あたりの日数が長ければ、それだけ短期間に大きな出費が発生します。入院費用の準備を考えるうえで、脳血管疾患の入院日数の長さは気になります。
三大疾病の入院1日あたりの医療費
厚生労働省『医療給付実態調査』(平成26年)から、三大疾病の1日あたりの医療費を引用します。金額は、健康保険や高額療養費制度を適用する前の実費です。
病名 | 1日あたりの医療費 |
---|---|
脳血管疾患 | 29,935 |
心疾患 | 87,196 |
悪性新生物(がん) | 50,509 |
全体の平均 | 32,649 |
最も高い心疾患と、最も安い脳血管疾患では、2倍以上の差があります。
入院日数が飛びぬけて長かった脳血管疾患は、1日あたりの治療費は目に見えて低いです。ただし、脳血管疾患は、入院日数が圧倒的に長いので、入院費用の総額ではトップのままです。
心疾患は、入院日数は短い方でしたが、入院1日あたりの医療費は、すば抜けて高いです。
がんは、やはり入院日数は短い方でした。入院1日あたりの医療費は、全体の平均よりは高いものの、心疾患ほどではありません。1入院にかかる費用は、脳血管疾患や心疾患より安くなりそうです。
ところで、健康保険の高額療養費制度を利用した場合、わたしたちが負担するのは、上の金額のごく一部です。
高額療養費制度を活用すれば、三大疾病による入院の自己負担額は、グッと低く抑えることができます。
上で、三大疾病の入院日数と1日あたりの医療費を見ていただきました。日数と医療費をかけ合わせると、それぞれの病気の総費用が出ます。かなり大きな金額になります。
しかし、幸いなことに、わたしたちが負担する金額は、それよりもずっと少額です。
健康保険の仕組みである高額療養費制度があるからです。
高額療養費制度を活用すると、1ヶ月あたりの医療費がどれだけかかっても、わたしたちの自己負担額は、制度で決められた金額を超えることはありません。健康保険など公的医療保険に加入している人は、誰でも利用できます。
高額療養費制度の自己負担する金額の上限は、年齢や所得によって決まります。つまり、人によって異なります。
以下で、一例をご覧いただくことにします。入院1回あたりの費用負担が最も大きくなりそうな、脳血管疾患をモデルに、試算してみます。
もしも、高額療養費制度を使わなかったら・・・
まず、高額療養費制度を使わなかったら、わたしたちの自己負担がどうなるか、試算してみます。
平均的な年収の現役世代の人が、脳血管疾患で90日(3ヶ月)入院した、という設定で、入院費用の実費を計算します。
29,117円(1日あたりの医療費) × 90日
= 2,620,630円
健康保険に加入していると、平均的な年収の現役世代の人は、3割負担です。というわけで、上の金額の3割を計算します。
2,620,630円(医療費の実費) × 3割(自己負担割合)
= 786,159円
医療費の実費に比べたら、自己負担分は、かなり安くなりました。それでも、金額としては大きいです。
そこで、高額療養費制度の出番です。
高額療養費制度を活用したときの自己負担の例
上と同じ設定で、高額療養費制度を活用したときの自己負担額を、試算してみます。
高額療養費制度では、1ヵ月単位で自己負担額が算出されます。年代と所得によって、自己負担額は異なります。
ここでは、その仕組みを詳しく説明するより、高額療養費制度の効果をご覧いただきます。
以下が、平均的な年収の現役世代の人が、脳血管疾患で90日(3ヶ月)入院したときの、自己負担額です。
1ヶ月目の自己負担額 | 86,165 |
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2ヶ月目の自己負担額 | 86,165 |
3ヶ月目の自己負担額 | 86,165 |
合計 | 258,495 |
3ヶ月にもわたる長期の入院ですが、高額療養費制度を利用すると、医療費の自己負担分は258,495円ですみます。
上の試算では、医療費以外の費用(食費、差額ベッド代、日用品や雑誌購入の費用、交通費など)を加えていません。実際にかかる費用はもっと多くなります。
仮の設定にもとづく試算に過ぎませんが、高額療養費制度が頼りになることは、ご理解いただけると思います。
医療保険の標準的な入院保障のままでも、三大疾病による入院のときには、かなり役に立ってくれます。
高額療養費制度を活用することで、自己負担額を抑えることができます。しかし、ゼロにはなりません。
自己負担分を医療保険でカバーするとしたら、どのくらいの保障が必要なのでしょうか。
脳血管疾患でも、標準の保障だけで、かなり役立つ
上の試算によると、脳血管疾患で90日(3ヶ月)入院したときの自己負担額は、258,495円でした。
ちなみに、一般的な医療保険の標準的な入院保障だと、入院1日あたり5,000円の入院給付金が出ます。
ただし、入院1回あたり60日間までの保障、というのが一般的です。90日入院しても、医療保険からもらえるのは60日分です。
心配になりますが、医療保険から出る入院給付金を計算してみると・・・
5,000円(入院給付金日額) × 60日
= 300,000円
となります。自己負担額は258,495円ですから、入院給付金額の方が4万円ほど多くなります。
実際には、入院給付金以外に、手術給付金も医療保険から出ます。手術給付金の金額は、商品によってかなり差があります。それでも、少なくとも5万円は期待できます。
あくまでも、入院期間90日間としたときの試算です。入院期間がもっと長引いたり、他の病院に転院することになれば、医療保険の入院給付金や手術給付金では足りなくなりそうです。
結論として、医療保険の標準の入院保障で十分とは言えないものの、平均的な入院治療までなら、おおむねカバーできそうです。
がんと心疾患は、標準の入院保障で十分
脳血管疾患の例をご覧いただきましたが、念のために、がんと心疾患も見ておきましょう。
がんと心疾患の平均的な入院期間は20日前後です。脳血管疾患より、かなり短くなります。
ただし、入院1日あたりの医療費は、がんと心疾患の方が高額でした。
平均的な年収の現役世代の人が、平均的な期間入院して、平均的な値段の治療を受けたとして、高額療養費制度を活用したときの、がんと心疾患の自己負担額を試算しました。
がん | 87,249円 |
---|---|
心疾患 | 94,743円 |
仮に20日間入院したとします。入院給付金日額5,000円、手術給付金50,000円の医療保険に加入していたとすると、20日分給付金額は以下になります。
5,000円(入院給付金日額) × 20日 + 50,000円(手術給付金)
= 150,000円
がんと心疾患の平均的な入院期間は20日前後なので、医療保険の1入院あたり60日間り限度まで、まだ余裕があります。この分だと、標準の入院保障で何とかできそうです。
三大疾病への準備を検討し、適切に商品やサービスを選ぶには、家計や保険の専門家を上手に活用しましょう。
三大疾病対策として、何を重視し、そのためにどういう手段をとるのか。
的確な判断をするためには、三大疾病の治療の実態、健康保険や高額療養費制度の仕組み、保険の仕組みや各社の商品内容などに、詳しくなければなりません。
その一つ一つを勉強するのは、かなりの時間と能力が必要になります。また、勉強したからといって、適切に判断できるとは限りません。
そこで、家計や保険の専門家を上手に活用することをオススメします。そのための手軽で安心な方法は、
賢い生命保険の入り方
をご覧ください。