第一生命の個人年金保険『ながいき物語』について、徹底分析
第一生命には2つの個人年金保険があります。
一つは、幅広い年代に対応した、従来型の個人年金保険『しあわせ物語』。もう一つが、中高年向けに開発されたとんちん年金『ながいき物語』です。
『しあわせ物語』については、第一生命『しあわせ物語』で詳しく案内しています。
このページでは『ながいき物語』について徹底分析します。
第一生命『ながいき物語』は、入ってはいけない危険な商品です。
『ながいき物語』は、加入した人の過半数が損をする、危険な個人年金保険です。
第一生命のような、国内有数の生命保険会社が、このような保険商品を販売していることに、驚きを覚えます。
加入者の過半数が、元本割れする
『ながいき物語』が異常な商品であることは、第一生命が提示しているモデルプランを見ただけで、一目瞭然です。
この図は、同社のウェブサイトの契約例をもとに、ポイントを目立たせるために、一部を省略しています。
右中段あたりに、「年金累計額が払込保険料累計額を上回る年齢」が記載されています。
- 男性 ・・・ 89歳
- 女性 ・・・ 94歳
つまり、この年齢になる前に亡くなると、損になってしまいます(払った保険料より、受け取った年金の方が少なくなる)。
日本人の平均寿命をご存知でしょうか。
厚生労働省が5年ごとに公表している『完全生命表』によると、2015年の男女の平均寿命は、
- 男性の平均寿命80.79歳
- 女性の平均寿命87.05歳
つまり、第一生命『ながいき物語』は
平均寿命より7~8年長生きできなければ、損になる
という、恐るべき個人年金保険なのです。
消費者をなめ切った姿勢に驚き
上の図の右下には、100歳まで生きたときの、返還率が記載されています。
- 男性 160.0%
- 女性 128.8%
『ながいき物語』に加入できるのは50~80歳と、中高年です。
50歳の人が、後期高齢者になる20~30年後には、100歳まで生きるのが、普通になるのでしょうか?
というわけで、内閣府『高齢社会白書』(平成29年版)から、将来の平均寿命の推計を、引用したのが、以下のグラフです。
これによると、2050年になって、ようやく女性の平均寿命が90歳を超えます。
この分だと、『ながいき物語』に加入しても、損をする危険性は、将来にわたって高いようです。
第一生命は、どうしてこんな保険を商品化したのでしょう・・・
とんちん年金という仕組みそのものに、危険性はありません。昔からある、合理的な仕組みです。
第一生命『ながいき物語』の広告に、 とんちん年金という言葉が登場します。
とんちん年金の仕組み自体は、危険なものではありません。というか、17世紀イタリアで考案された、古典的な年金の仕組みです。
危険なのは、とんちん年金という言葉を、さも新発想であるかのように持ち出して、不利益の大きな個人年金保険を、消費者に売り込む生命保険会社の姿勢です。
とんちん年金は、年金開始前に、亡くなったり解約すると損
従来型の個人年金保険と、とんちん年金と呼ばれる個人年金保険の大きな違いは、加入してから年金を受け取るまでの間に、解約したり、死亡したときの、取り扱いにあります。
従来型の個人年金 | 保険会社は、その加入者のために積み立てていたお金を、死亡保険金または解約返戻金として、全額支払う。 |
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とんちん年金 | 保険会社は、その加入者のために積み立てていたお金の一部を、死亡保険金または解約返戻金として支払う。あるいは、まったく支払わない。 |
生命保険会社は、将来年金支払うために、預かった保険料の一定割合を社内で積み立てています。
従来型の個人年金保険だと、加入者が死亡するか解約すると、その全額を、死亡保険金または解約返戻金として、もらうことができます。
ところが、とんちん年金だと、積み立てているお金の一部しか戻ってきません。商品によっては、まったく戻りません。
そして、保険会社の手元に残ったお金は、他の加入者の年金の準備資金に回されます。
つまり、とんちん年金を採用すると、早く亡くなる人や解約する人が損するかわりに、保険料を安くできます。
どのくらいの人数が亡くなり、どのくらいの人数が解約するか、保険会社は統計をとって把握しています。それをもとに、とんちん年金の保険料を、安めに料金設定します。
『ながいき物語』は、高齢者の資金を獲得するために、なりふりかまわず販売されている、危険な保険です。
第一生命『ながいき物語』では、年金開始前の死亡保険金・解約返戻金を、3割引き下げています。
ということは、年金開始前に亡くなるか解約したら、保険会社からもどってくる金額は、払い込んだ保険料総額の7割以下になります。
引き下げられた3割は、言わば 掛け捨て部分になります。
貯蓄目的の個人年金保険で、 掛け捨て部分が大きいと、消費者に嫌われる危険があります。それで、控えめに3割にとどめたのでしょう。
高齢者に、保険商品を売ることを優先した、危険な商品
年代別に預貯金を比べると、金額が大きいのは高齢者世帯です。
グラフは、総務省『家計調査報告』(2016年)の、年代別の預貯金額を表しています。
生命保険会社の商品は、もともと、若年~中年層を対象にしたものが多いです。また、高齢者が入れる商品であっても、保険料が高額になりすぎたり、健康状態を理由に加入できない可能性があります。
しかし、高齢者世帯は、世帯数が多い上に、お金を持っています。保険会社としては、何とか、高齢者世帯に保険商品を販売したいです。
そこで、とんちん年金の仕組みを取り入れてたのでしょう。
とんちん年金なら、少しでも保険料を下げられるし、健康状態に問題があっても、加入できます(加入者が早く亡くなっても、保険会社や他の加入者の損にならない)。
『ながいき物語』は問題のある商品
医療技術の進歩などにより、日本人の寿命は延びています。
それ自体は喜ばしいことですが、反面、準備していた老後生活資金では心細くなる危険があります。
『ながいき物語』は、そういうニーズに応える商品です。それゆえに、加入できる年齢は
50歳~80歳と、高く設定されています。
これまで加入できなかった年代の人たちが、個人年金保険に入れるようになりました。
しかし、とんちん年金の仕組みを導入してもなお、十分な利回りを実現できていません。平均寿命より10年前後長生きしないと、損をするという、リスクの大きな商品です。
販売するときに、そうしたリスクが正確に説明されていて、承知のうえで加入するなら、何も言うことはありません。
しかし、すべての加入者が、正しくリスクを理解できるのか、心配です。毎年1万3千人以上の人が、振り込め詐欺の被害にあっている昨今ですから・・・
高齢者の生命保険をめぐるトラブルは、増加傾向にあるようです。
2017年9月12日付の、毎日新聞の記事「生保契約トラブル、無理な勧誘、高齢者に続発」によると、国民生活センターへの、70歳以上の生命保険に関する相談件数は、増加しているとのこと。
記事からポイントを抜き出すと・・・
- 国民生活センターへの、70歳以上の生命保険に関する、2016年度の相談件数は2,936件。
- 親が高額の契約をしたが解約したい、という子供からの相談が多い。
- 自宅を訪問した営業員による勧誘がきっかけで、契約した高齢者が目立つ。
- 保険内容を理解していないことが多い。認知症の人が契約させられる悪質なケースもある。
第一生命『ながいき物語』は、こうしたトラブルの種になりやすい商品の一つです。
2016年4月の発売から、2017年7月末時点で、約4万5千件販売されたそうです。みなさん、この商品のリスクを正しく理解して加入されたのか、気になります。