第一生命の積立年金『しあわせ物語』を徹底分析
第一生命には2つの個人年金保険があります。
一つは、幅広い年代に対応した、従来型の個人年金保険『しあわせ物語』。もう一つが、中高年向けに開発された個人年金保険『ながいき物語』です。
『ながいき物語』については、第一生命『ながいき物語』で詳しく案内しています。
このページでは、『しあわせ物語』について徹底分析します。
第一生命『しあわせ物語』は、安全性の高い貯蓄としては、まずまず好利回りです。
『しあわせ物語』は、ごく標準的な仕組みの個人年金保険です。
所定の年齢まで保険料を払い込むと、その翌年から、年金を受け取ることができます。
保険料払込期間中に亡くなると、それまでに払い込んだ保険料分の金額が戻ります。
仕組みに特徴がないので、貯蓄商品としての利回りがポイントになります。
利回りは、安全志向の貯蓄としてはまずまず
『しあわせ物語』は、2017年の3月までは、利回りの良さが魅力の商品でした。
ところが、2017年4月に保険料率の改定があり、『しあわせ物語』も対象になりました。
その結果、保険料は値上がりし、利回りは悪くなりました。
それでも、大手生保の個人年金保険の中では、もっとも高い保険料率を保っています。
例をご覧いただきます。30歳男性が、60歳まで保険料払い込んで、そのまま年金を10年間受け取るときの、保険料と利回りの試算です。
月々の保険料 | 32,000円 |
---|---|
保険料の総額 | 1,152万円 |
年金額 | 120万5,900円 |
年金総額 | 1,205,900円 |
返還率 | 104.6% |
利回り | 約0.23% |
返還率は、こちらが払い込んだ保険料に対して、年金受取額がどれだけ増えるかを表します。
104.6%ならば、払い込んだ保険料より、4.6%増えてもどる、ということです。
返還率は、保険独特の数値なので、他の金融商品の利回りとは比較できません。
そこで、このサイトで年利に換算しました。
0.23%という利回りは、高い数字ではありませんが、以下のような銀行の定期預金金利(2017年6月)と比べると、けっこう頑張っています。
3大メガバンク | 0.01% |
---|---|
ゆうちょ銀行 | 0.01% |
楽天銀行 | 0.03% |
オリックス銀行 | 0.25% |
第一生命『しあわせ物語』の0.23%という金利は、3大メガバンク(三菱UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行)やゆうちょ銀行の定期預金金利よりは、はるかに高いです。
金利の高いネット銀行の定期預金金利と比べると、楽天銀行には圧勝ですが、オリックス銀行にはわずかな差で負けてしまいました。
完全勝利にはなりませんでしたが、第一生命『しあわせ物語』は、なかなかの健闘ではないでしょうか!?
が、対オリックス銀行で、『しあわせ物語』の負けと決まったわけではありません。『しあわせ物語』には、まだ奥の手があります。
第一生命『しあわせ物語』は、個人年金保険料控除を受けられるので、実質的な利回りはさらにアップします。
個人年金保険は、確定申告で 個人年金保険料控除を受けることができます。
所得を生命保険や個人年金保険に使うと、保険料の一部が所得から控除されて、税金が安くなります。これは、預貯金等にはない、保険ならではの税金面での特典です。
税金がいくら安くなるかは、年間の保険料とか所得によって異なります。
たとえば、上の第一生命『しあわせ物語』の例で、所得税率20%(所得330~695万円)の世帯なら、銀行などに預けるのに比べて、所得税が8,000円安くなります。
それを反映させて、保険料が年に8,000円安くなるとすると、返戻率と年利は以下のようになります。
節税前 | 節税後 | |
---|---|---|
返戻率 | 104.6% | 106.9% |
年利 | 0.23% | 0.33% |
0.33%の利回りなら、オリックス銀行の定期預金金利0.25%より上です。
元本割れが無く、将来の受取金額が約束されている貯蓄として、なかなか魅力的です。
生命保険の利回りを表す返還率は、けっこうあやふやな数字です。他社の個人年金保険と比べるときは、要注意です。
上の見積もり例では、第一生命『しあわせ物語』の返還率は104.6%でした。
他社の個人年金保険でも、同じくらいの返還率を目にしますが、返還率を比較するときに、注意していただきたいことがあります。
個人年金保険の返還率は、ちょっとしたことで変化する
銀行などの預金金利が0.1%となっていたら、預ける期間や預ける金額がどうであろうと、金利は0.1%です。揺るがない数字です。
これに対して、個人年金保険の返還率は、加入年齢、年金受取開始年齢、年金の受け取り方法、年金額などが変わると、つられて変化します。
他に、個人年金保険の利回りを評価できる数字がないので、返還率を判断基準にするしかないのですが、けっこうあやふやな数字です。
見せかけの返還率の高さにだまされない
そこで、気をつけていただきたいのが、見せかけの返還率にだまされないということです。
生命保険会社によっては、自社商品の利回りを良く見せるために、返還率が高くなりやすいプランのみを広告に使っています。
返還率を高く見せる、ありがちなパターンには、以下の2つがあります。
- 保険料払込終了から年金支払い開始までに、空白期間(据え置き期間)がある。
- 年金が支給される期間が長い。
以下で具体例をご覧いただきます。
据え置き期間があると、返還率が高くなる
第一生命『しあわせ物語』のパンフレットなどで示されているプランは、据え置き期間がありません。
契約内容や返還率は以下のようになっています。
保険料払込期間 | 30~60歳 |
---|---|
保険料の総合計 | 1,152万円 |
年金受取期間 | 60~70歳 |
年金の総額 | 1,205万9千円 |
返還率 | 104.6% |
次に、明治安田生命の個人年金保険『年金かけはし』のプランをご覧いただきます。
明治安田生命は、保険料や年金受取額をシミュレーションできるサービスを、同社のホームページで提供しています。第一生命には、そういうサービスはないので、明治安田生命の方が良心的です。
ただし、明治安田生命のシミュレーションのプランは、自動的に5年間(60~65歳)の据え置き期間が設定されます。
つまり、保険料を払い終えてから5年間は、"おあずけ"になります。
そんな明治安田生命『年金かけはし』で、第一生命のプランに近い条件でシミュレーションすると、契約内容や返還率は以下のようになりました。
保険料払込期間 | 30~60歳 |
---|---|
保険料の総合計 | 1,080万円 |
年金受取期間 | 65~75歳 |
年金の総額 | 1,143万円 |
返還率 | 105.9% |
返還率は105.9%で、第一生命『しあわせ物語』より1.3%上回っています。
これは、明治安田生命の個人年金保険の方が、利回りが勝っているということでしょうか?
明治安田生命『年金かけはし』の年利回りを計算すると、約0.23%でした。第一生命『しあわせ物語』の年利回りも約0.23%でしたから、ほぼ同じです。
実際にお金が増えるペースは、2つの商品ともほぼ同じですが、明治安田生命のサンプルのプランに据え置き期間があるので、返還率が高いように見えてしまいます。
判断を誤らないために、保険の専門家を活用
と言っても、明治安田生命が悪質、というわけではありません。同じようなことをやっている保険会社は複数あります。
大切なことは、返還率の特性をわかった上で、見せかけにだまされないことです。
と言っても、返還率は使い慣れない数字です。気をつけても、判断ミスをしないとは言い切れません。
できれば、保険の専門家の助言をもらいながら、検討を進めたいです。
個人年金保険の検討は、保険の専門家をうまく活用しましょう。
複数の保険会社の個人年金保険を比較したり、他の金融機関の商品と比べるときに、返還率を避けて通ることができません。
返還率そのものは単純に計算できる数字ですが、上で例をご覧いただいたように、判断材料としてはやっかいです。
商品選びで判断を誤らないように、保険の専門家をうまく活用してください。
また、個人年金保険の保障内容(保険料払込期間、年金の受取開始年齢と期間、年金額など)を決めるためには、老後生活資金全般について、見通しを立てる必要があります。
公的年金、老後の健康保険、勤め先の退職金制度、相続など、調べたり判断することがいろいろあります。一般の消費者が、独力で調べ上げて、正しく判断するのは難しいです。
老後生活資金の準備は、十数年~数十年単位で取り組む、長期プロジェクトです。スタート時点で、方向を誤ったらダメージは大きいです。
ご検討にあたっては、保険・家計の専門家を上手に活用しましょう。
その手軽で安心な方法は、
賢い生命保険の入り方
をご覧ください。