主婦の生命保険
生命保険は、起こる確率は高くないけれど、起こると困る出来事に対する、金銭面での準備です。
起こるかどうかわからないから、どこまで準備すれば十分かが判断しにくいです。
そのうえ、主婦業をお金に置き換えたら、どのくらいの金額になるのか、もハッキリしていません。
このページでは、そのあたりを掘り下げます。
仕事をしている、していないに関係なく、主婦の方の多くが、死亡保険・医療保険に加入されています。
まず、主婦のどのくらいが生命保険に加入しているのか、その件数や保険料はどのくらいなのか、チェックします。
死亡保険(亡くなったときの保障)、医療関係の保険、個人年金保険(老後の生活資金)にわけて、見ていきましょう。
データは、生命保険文化センターの平成27年度『生命保険に関する全国実態調査』に基づきます。
死亡保険(亡くなったときの保障)
世帯主が男性である家庭の、妻の加入状況です。「仕事を持つ主婦」には、パートを含みます。
仕事を 持つ主婦 |
専業主婦 | |
---|---|---|
加入件数の平均 | 1.7件 | 1.7件 |
死亡保障額の平均 | 1,012万 | 766万 |
件数は、仕事を持っているいないで、違いはありませんでした。
一方、死亡保障額は、仕事を持っている主婦の方が、大きくなっています。
続いて、仕事を持っている主婦のうち、自営業、正規雇用、派遣社員、パート別の、件数と金額を調べました。
職業 | 加入件数 | 死亡保障額 |
---|---|---|
自営業 | 1.8件 | 1,052万 |
正規雇用 | 1.8件 | 1,322万 |
派遣社員 | 1.8件 | 1,299万 |
パート | 1.5件 | 825万 |
仕事によって、死亡保障額に、バラつきがあります。
医療関係の保険
医療関係の保険は、種類がいろいろあります。
- 医療保険(入院保障)
- がん保険
- 特定疾病保障保険(三大疾病などで一時金)
- 介護保険
どれも、多くの保険会社が販売しているので、ひとつひとつチェックします。
医療保険(入院保障)
医療保険は、もともと入院保障中心の保険です。中には、通院特約を用意している商品がありますが、入院前後の通院や、特定の病気の通院に限定されます。
医療保険の、加入率と入院給付金日額(1日あたりの給付金額)を、ご覧いただきます。単体で販売されている医療保険だけでなく、他の保険に付加されている医療特約も含みます。
仕事を 持つ主婦 |
専業主婦 | |
---|---|---|
医療保険加入率 | 82.4% | 73.6% |
入院給付金日額 | 8,860円 | 8,200円 |
加入率はなかなか高いです。
加入率でも入院給付金日額でも、仕事を持つ主婦の方が上回りました。特に、加入率は10%近くの差があります。
がん保険
こちらも、加入率と入院給付金日額(1日あたりの給付金額)を、ご覧いただきます。単体で販売されているがん保険だけでなく、他の保険に付加されているがん特約も含みます。
仕事を 持つ主婦 |
専業主婦 | |
---|---|---|
医療保険加入率 | 49.2% | 42.4% |
入院給付金日額 | 10,320円 | 9,840円 |
医療保険に比べると、加入率そのものが低いです。
仕事を持つ主婦の方が、加入率、入院給付金日額ともに、上回りました。
特定疾病保障保険(三大疾病などで一時金)
特定疾病の範囲は、商品によってちょっとずつ異なりますが、だいたいは「がん」「急性心筋梗塞」「脳卒中」の3つです。
これらの病気になって、保険会社の決めた条件に当てはまると(医師の診断とか入院とか)、一時金が出る保険です。
こちらは、加入率のみ、ご覧いただきます。単体で販売されている特定疾病保障保険と、特定疾病保障特約(名称は商品によって異なります)の合計です。
仕事を 持つ主婦 |
専業主婦 | |
---|---|---|
特定疾病保障保険加入率 | 33.2% | 23.3% |
加入率は、がん保険より低くなりました。
介護保険
公的介護保険制度の、手薄なところを穴埋めするための、個人向けの介護保険です。
こちらも、加入率のみ、ご覧いただきます。単体で販売されている介護保険と、介護特約の合計です。
仕事を 持つ主婦 |
専業主婦 | |
---|---|---|
介護保険加入率 | 10.4% | 6.7% |
加入率はかなり低くなりました。
個人年金保険(老後の生活資金)
生命保険文化センターの統計では、夫婦をまとめて、世帯として個人年金保険の加入率を集計しています。
下表は、生命保険文化センターの統計をもとに、このサイト独自で算出した推計値。正確ではないので、参考程度にとどめてください。
仕事を 持つ主婦 |
専業主婦 | |
---|---|---|
個人年金保険加入率 | 16.1% | 14.7% |
少子高齢化で、老後の生活資金への意識が高まっているはずなのに、加入率はけっこう低いです。
低金利、マイナス金利のせいで、個人年金保険の利回りが、良くないからでしょうか。
主婦の加入状況をまとめると・・・
情報量が多くなったので、主婦の加入状況をまとめます。
過半数が加入している保険 |
|
---|---|
半数近くが加入している保険 |
|
加入率20%以下の保険 |
|
なお、上の表の傾向は、仕事を持っている主婦にも、専業主婦にも当てはまります。
加入件数や保障内容に差はありますが、傾向はほとんど同じです。
まずは、死亡保険と医療保険から検討ですね!
主婦に検討してほしい死亡保障は4つあります。それぞれについて、検討のポイントをお示しします。
仕事を持っているいないにかかわらず、主婦が亡くなったときに発生しそうな費用には、次のようなものがあります。
- 葬式・諸費用
- 主婦業の穴埋め
- 相続税対策
仕事を持っている主婦なら、さらに次の項目が加わります。
- 世帯の収入減の穴埋め
葬式・諸費用
葬式の費用は、地方によって、相場にかなりの差があるようです。
ここでは、日本消費者協会『葬儀についてのアンケート調査』(2017年)から、全国平均を引用します。
費用項目 | 費用 |
---|---|
通夜からの飲食接待費 | 30.6万円 |
寺院への費用 | 47.3万円 |
葬儀一式の費用 | 121.4万円 |
合計 | 195.7万円 |
この他、遺品整理、戒名、お墓代などが、かかる可能性があります。
これらの費用は、生涯のいつ発生するかわかりません。保険で準備するなら、一生涯の死亡保障である終身保険が適しています。
主婦業の穴埋め
亡くなった主婦の家事を、残った家族で吸収しきれないかもしれません。業者などに依頼して穴埋めすると、費用が発生します。
この費用は、家庭の状況(家族構成、子供の年齢、職業など)によって異なるので、一概には決められません。
厚生労働省『賃金構造基本統計調査』によると、それぞれの家事の時給は次のようになります。
家事 | 時給 |
---|---|
炊事 | 1,163円 |
掃除 | 992円 |
洗濯 | 1,015円 |
縫物・編物 | 858円 |
介護・看護 | 1,193円 |
育児 | 1,238円 |
買い物 | 1,141円 |
この金額は、あくまでも賃金の平均なので、業者に依頼すると、もっと高くなるかもしれません。
そのときどきの家庭の状況(子供の数や年齢など)によってかかる費用が異なるため、収入保障保険(または定期保険)と終身保険の組み合わせが望ましいです。
相続税対策
何度かの税法改正により、特別な資産家でなくても、相続税がかかるようになっています。
平成27年改正後の相続税の基礎控除額は、以下のようになっています。この金額は、法定相続人(法的な相続の権利を認められている人)の数によって変化します。
相続財産が、下表の基礎控除額を超えるときに、相続税がかかります。
法定相続人の数 | 基礎控除額 |
---|---|
1人 | 3,600万円 |
2人 | 4,200万円 |
3人 | 4,800万円 |
4人 | 5,400万円 |
5人 | 6,000万円 |
要するに、法定相続人が一人増えるごとに、基礎控除額は600万円増えます。
相続に生命保険を使うと、税金面で優遇されるので、トクになります。
以下の2つが、トクになる代表的なケースです。
- 生命保険金(生命保険から受け取るお金)のうち、「500万円×法定相続人の人数」まで、相続税の対象から外せる。
- 生命保険の保険料は、毎年の納税で、生命保険料控除を受けることができる。
相続は、生涯のいつ発生するかわかりません。保険で準備するなら、一生涯の死亡保障である終身保険が適しています。
仕事を持つ主婦の、収入減の穴埋め
上の3つは、仕事のあるなしに関係なく、すべての主婦に共通することでした。
仕事を持っている主婦は、あれらに加えて、亡くなったときの世帯の収入減に、備える必要があります。
たとえば、パート収入を、子供の学校外の教育費(私立学校の学費、塾、家庭教師、習い事など)に当てていたとしたら、他の手段でその費用を捻出(ねんしゅつ)したいです。
この例だと、子供が経済的に自立するまでは死亡保障が必要なので、収入保障保険や定期保険が適当です。
このように、主婦の収入の使い道によって、準備する保障の内容が決まります。
死亡保険は、考えなければならないことがたくさんあって、大変ですね。
男性より、女性の方が、医療保険の必要性は高いです。女性特有の病気だけでなく、いろんな病気に備えたいです。
日本人の寿命は、世界でもトップクラスの長さです。それは良いことですが、金銭面では"長生きの不安"が表面化しています。
そんな不安の一つが、病気にかかったときの治療費用に対する不安です。中でも、短期間にまとまった出費になりやすい入院費用が気になります。
女性は、病気やケガで入院する危険性が高い
実は、統計データを調べると、入院費用の面では、男性より女性の方が不安は大きいです。
厚生労働省『患者調査』(平成26年)から、男女別の入院患者数を引用します。
男性の入院患者数 | 女性の入院患者数 | |
---|---|---|
総数 | 603,800人 | 715,100人 |
65歳以上 | 396,400人 | 540,900人 |
75歳以上 | 247,200人 | 422,200人 |
ちなみに、2017年3月1日現在の男女の人口は、男性6,168万人、女性6,508万人で、女性がやや多い程度です(総務省統計局『人口推計』)。
上表の入院患者数の男女比は、人口の男女比より、ずっと女性の割合が高くなっています。しかも、年齢が上がるほど、その傾向は強まっています。
女性が病気にかかりやすいというより、女性の平均寿命の長さが原因なのでしょう。男女の平均寿命は、6歳ほど女性の方が長いですから。
原因は何であれ、男性より女性の方が、医療費用を準備する必要性は、高いです。
医療保険を、できる範囲で手厚くする
女性がかかりやすい病気には、どんなものがあるのか、上と同じ厚生労働省の統計から引用します。
女性の患者数が男性の1.5倍以上いて、その患者数が1万人以上の病気を抜き出します。
病名 | 入院患者数 |
---|---|
関節症 | 156,800人 |
骨折 | 118,700人 |
アルツハイマー病 | 65,600人 |
乳房及びその他の女性生殖器の疾患 | 56,400人 |
白内障 | 53,800人 |
骨の密度及び構造の障害 | 53,300人 |
胃炎、十二指腸炎 | 46,100人 |
神経症性障害など | 38,000人 |
甲状腺障害 | 33,700人 |
炎症性多発性関節障害 | 33,200人 |
乳がん | 29,500人 |
眼の屈折・調節の障害 | 29,500人 |
認知症 | 27,300人 |
結膜炎 | 22,900人 |
パーキンソン病 | 20,600人 |
貧血 | 14,300人 |
頚腕症候群 | 10,400人 |
くも膜下出血 | 10,100人 |
子宮がん | 9,700人 |
女性にしかない臓器(乳房、子宮、卵巣など)の病気も含まれていますが、性別に関係ない病気・ケガの方が多いです。
多くの保険会社が、女性専用の医療保険を販売しています。そうした商品の大半は、一般的な医療保険の機能に加えて、女性特有の臓器の病気を、いっそう手厚く保障します。
しかし、上の表によると、限られた病気を手厚くするより、いろんな病気に対応できるように、保障全体を手厚くする方が、良さそうです。
たとえば、入院給付金日額を上げるとか、入院1回あたりで保障される日数を長くするとか。
医療保険を決めるには、病気や治療の知識も必要になりますね。
貯蓄型保険の利回りは全体的に低下していますが、安全志向の貯蓄の中では検討の余地があります。専門家に活用して、上手に選択しましょう。
生命保険会社が提供している、貯蓄型の保険商品には、次の6タイプがあります。
- 低解約返戻金型終身保険
- 養老保険
- 学資保険
- 個人年金保険
- 変額保険
- 外貨建ての保険
生命保険会社の貯蓄性商品は、原則として安全志向です。大もうけは難しいかわりに、損をするリスクの低いものが多いです。
例外は、変額保険と外貨建ての保険です。これらの商品は、損をするリスクがそれなりにあります。それでも、証券会社の金融商品などに比べると、リスクは穏やかです。
6タイプそれぞれのメリット、デメリットを簡潔に下表にまとめました。
低解約返戻金型終身保険 | |
メリット |
|
デメリット |
|
養老保険 | |
メリット |
|
デメリット |
|
学資保険 | |
メリット |
|
デメリット |
|
個人年金保険 | |
メリット |
|
デメリット |
|
変額保険、外貨建保険 | |
メリット |
|
デメリット |
|
なお、「安全な貯蓄としては、利回りが~」というのは、あくまでも銀行の定期預金との比較です。定期預金の金利が低すぎるので、それよりはマシに見える、というニュアンスでお読みください。
貯蓄型保険を検討するにあたって、ご留意いただきたいことがいくつかあります。
生命保険の貯蓄の殖え方は、預貯金とは異なる
上表のデメリットのところに書いた通り、貯蓄型保険に加入して、途中で止めると、損になります。
その原因の一つが、保険独特のお金の殖え方にあります。
貯蓄型保険のでは、図のようなカーブを描きながら増えていきます。
図の「ここから黒字になる」より前の時点で解約してしまうと、戻ってくるお金は、支払った金額を下回ります。
保険料払込期間や満期が決まっている商品は、途中で解約すると、ほとんどの場合損になってしまいます。
貯蓄型保険では"利回り"を使わない
貯蓄型保険では、お金の殖え方を表現するのに、"利回り"を使いません。
返戻率とか戻り率という言葉で表現されます。
上の図で説明したように、貯蓄型保険でのお金の殖え方は、一定ではありません。一定ではないので、"利回り"という考え方になじみません。
返戻率とか戻り率というのは「〇〇年後にお金を受け取ったら、□□%お金が増える」という意味です。
お金を受け取る時期を変えると、返戻率(戻り率)も変わります。
もし、貯蓄型保険と、他の金融機関の商品とを比較するときは、返戻率(戻り率)を利回りに変換しなければなりません。
計算自体がややこしいですし、計算間違いは怖いです。保険のプロに相談しながら検討することを、お勧めします。
貯蓄型保険の損得の判断には、税金の知識も必要
貯蓄性商品の利回りが良くない時代なので、税金の影響は軽視できません。
保険料については、確定申告で、忘れずに生命保険料控除、個人年金保険料控除を受けましょう。
また、加入するときに、契約者や受取人を誰に指定するが、税金に影響します。
たとえば、個人年金保険の場合だと
契約者 | 受取人 | 年金にかかる税金 |
---|---|---|
夫 | 夫 | 所得税 |
夫 | 妻 | 初年度に贈与税、翌年から所得税 |
保険の種類によって、税金面での注意事項がいろいろあります。
税金面で損になる加入のしかたをすると、取り返しがつきません。お金を受け取るときに、保険会社に苦情を言っても、どうにもなりません・・・
生命保険で貯蓄をするときは、専門家の助言を受けないと、危険ですね。
保険の専門家に無料で相談できて、主要な保険商品の見積もりを、手軽に比較できる方法があります。
生命保険選びを成功させるには、次の2つのことを欠かせません。
- 保険の専門家のアドバイスを受ける。
- 各社の見積書・設計書を手に入れて、比べて選ぶ。
専門家のアドバイスの必要性は、上で説明した通りです。
ところで、頼りになる専門家であっても、言われるがままの保険商品に加入するのは、よろしくありません。
というのは、保険は十数年、数十年と、長く続けることが多いです。加入したときの専門家が、いつまでも近くにいるとは限りません。ご自分で納得して決めましょう。
生命保険を販売するところはたくさんありますが、上の2つのことを実現できるのところは、限られています。詳しくは
賢い生命保険の入り方
をご覧ください。