子供のいない夫婦の保険
子供がいない夫婦の保険を検討するときに、どんなことに気をつけなければなりませんか?
子供がいる専業主婦の世帯にご検討いただきたい保険と、それぞれの重要度・優先度をご説明します。
保険が得意とする4つの分野に分けて、その重要度・優先度などを説明します。
➀ 遺族の生活資金
共働きか専業主婦かで、対策は大きく異なります。
妻に自活できる収入がある世帯
共働きで、それぞれが自活できる収入があるなら、遺族のための保険は当面必要ありません。
妻にも収入はあるが、自活はできない世帯
共働きだが、主婦(または主夫)の収入では自活が難しいときは、世帯主が亡くなったときの遺族の生活費を検討する必要があります。
公的年金のうち、遺族基礎年金は、子供がいないと受給できません。一方、遺族厚生年金は、子供がいなくても受け取れますが、30歳未満だと5年間のみになります。
このように、公的年金制度に期待できないケースもあるので、慎重に検討してください。
年金額は、世帯主の収入やかけていた期間によって変わるので、入っている年金(国民年金、協会けんぽ、組合健保、共済組合など)にお問い合わせください。
妻の収入と年金を合わせても足りなければ、世帯主の死亡保険で不足分を埋めることを検討してください。
専業主婦(主夫)のとき
上の「妻にも収入はあるが、自活はできない」と、同じようにご検討ください。
妻に収入がないので、保険などで対策する必要性は、より高くなります。
参考までに、平均年収400万円で、年金の加入期間25年未満の、遺族年金額の例をご覧ください(子供がいない世帯)。
妻の年齢 | 自営業 (国民年金) |
会社員・公務員 (厚生年金) |
---|---|---|
40歳未満 | なし | 411,075円 |
40~64歳 | なし | 996,175円 |
65歳以上 | 780,100円 | 1,191,175円 |
「妻の年齢」は、夫が亡くなったときの年齢です。
➁ 死後の整理資金
どんな人でも、必ず発生する費用です。ご夫婦ともにご検討ください。
ただし、相続税が高額になるような資産家を除くと、高額になりにくいです。
とくに近年は、身内だけによるこじんまりとした葬式が多くなっているようです。
急に必要になったときに、200~300万円くらい動かせるお金があるなら、保険に入る必要性は低いです。
整理資金は、亡くなられた後すぐに発生する、まとまった出費です。
まだ動揺が収まっていない時期なので、数百万円の保険金であっても、金銭的な価値以上に心強く思えるかもしれません。
また、この目的のために使われる終身保険は、いつかは必ず保険金を受け取ることができる(掛け捨てではない)ので、迷うなら入ってもよいです。
➂ 医療費
そもそも論として、日本は公的医療保険制度が充実しているので、医療保険やがん保険の必要性は低いです。
入院するときなどに保険があると心強いですが、だからと言って、保険がないと治療費を払えない、という事態は起こりにくいです。
また、加入者のほとんどは、受け取る給付金総額より、払い込む保険料累計の方が大きくなります。
とは言え、難病・奇病で生涯入退院を繰り返すリスクはゼロではありません。必要性は低いけれど、無意味というわけではありません。
就業不能保険
世帯主が入院などにより長期間働けなくなったら、その間の生活費も心配になります。
医療保険などで、金額を多めに設定できますが、限度額があるので、生活費まで確保するのは無理です。
生活費がご心配なら、医療保険とは別に、就業不能保険をご検討ください。
ただし、世帯主が企業か役所に就職されていて、協会けんぽ・組合健保・共済組合のどれかに入っているときは、傷病手当金や出産手当金が出るので、必要性は高くありません。
とくに検討していただきたいのは、自営業や会社経営をされている方々です。
➃ 生活資金(学資・老後)
他の金融商品と同じく、貯蓄型保険の利回りもこの数年低水準です。
しかも、主力商品は固定金利(加入した時の金利に固定される)です。元本保証はありますが、低い金利で固定されるので、魅力度は低いです。
ただし、定期預金など、他の金融機関の元本保証がある商品に比べると、利回りは少し上なので、迷うところです。
また、生命保険料控除が適用される入り方をすれば、節税になります。
元本保証にこだわるなら、貯蓄型保険は選択肢になります。
近年、外貨建ての一時払い保険などが注目されています。
利回り面で有利な商品は多いようですが、元本割れのリスクがあります。
また、何かにつけて手数料がかかるので、仕組みを分かっていないと損をしやすいです。
外貨運用に自信がある方、興味がある方以外には、おすすめしにくいです。
【参考】4つの分野の概要
年代や家族構成などにかかわりなく、意識していただきたい基本事項を、下表に整理しました。
遺族の生活費 |
|
---|---|
死後の整理資金 |
|
医療費 |
|
生活資金(学資・老後) |
|
迷うくらいだったら、終身保険に加入した方が良い理由があります。どっちに転んでも、損にならないのが魅力です。
掛け捨て保険は、保険を使わなければ、お金は戻りません。必要のない掛け捨て保険に入るのは、お金を捨てるようなものです。
それに比べると、必要性を感じないで終身保険に入っても、金銭的な損にはなりません。
終身保険が損にならない理由
終身保険では、死亡保障が一生続くので、いつかは必ず死亡保険金を受け取ることができます。
そして、死亡保険金は、払い込んだ保険料総額より大きくなるので、金銭的に損をすることはありません。
なお、途中で解約したら、払い込んだ保険料の一部が戻ります。全額ではないので、途中での解約は損になります
ただし、掛け捨て保険を解約しても戻るお金はわずかなので、それよりはマシです。
どうせ入るなら、早く入る方がおトク
生命保険の保険料は、通常は、加入する年齢が高くなるほど、金額が大きくなります。
それだけでなく、入る時期が遅くなるほど、保険料の総額が大きくなる傾向があります。
オリックス生命の終身保険『RISE(ライズ)』の保険料と解約返戻率のシミュレーションをご覧ください。
それぞれの年齢の男性が、死亡保険金500万円、60歳までの保険料払い込みで加入したときの、保険料総額と解約返戻率(解約したときの戻り率)をシミュレーションしました。
加入年齢 | 月々の保険料 (支払い総額) |
解約 返戻率 |
---|---|---|
30歳 |
10,920円
(3,931,200円) |
110.8%
|
40歳 |
17,470円
(4,192,800円) |
103.8%
|
50歳 |
37,690円
(4,522,800円) |
96.3%
|
早く入るほど、1回あたりの保険料も、保険料総額も、解約返戻率も有利です。
条件が合えば、保険料の合計より、解約で戻る金額の方が、大きくなることもあるのですね!
子供のいない夫婦の保険についての、よくある疑問に、Q&A形式でお答えします。
子供のいない夫婦は、生命保険にどのくらい入っていますか?
生命保険文化センター『生命保険に関する全国実態調査』(平成30年度)によると、加入率は以下の通りでした。
- 世帯主40歳未満の加入率 73.3%
- 世帯主40歳以上の加入率 85.6%
子供がいる夫婦の加入率は90%を超えています。また、この調査に回答した全世帯の平均加入率は88.7%でした。
これに比べると、子供がいない世帯の保険加入率は低いです。
子供のいない夫婦は、生命保険に平均いくら入っていますか?
生命保険文化センター『生命保険に関する全国実態調査』(平成30年度)によると、世帯あたりの平均値は以下の通りでした。
- 加入件数は、40歳未満3.0件、40歳以上3.3件
- 死亡保険金額は、40歳未満2,156万円、40歳以上1,433万円
- 年間保険料は、40歳未満242,600円、40歳以上303,700万円
加入件数
全体の平均が3.9件です。それに比べると、子供がいない夫婦の件数は少ないです。
死亡保険金額
全体の平均が2,255万円なのに対し、子供がいない夫婦の死亡保険金額は少ないです。
とくに40歳以上は目立って少ないです。
といっても、加入件数は40歳以上の方が多いので、医療保険や貯蓄型保険が多いのでしょう。
年間保険料
全体の平均は、381,700円です。子供のいない40歳未満の夫婦は、平均より10万円以上少ないです。
50代の子供のいない夫婦が、検討した方が良い生命保険は何ですか?
葬式代・死後の整理資金を保険で用意する必要があれば、終身保険を検討してください。ただし、預貯金などでカバーできそうなら、保険に入る必要はありません。
次に、ご夫婦での老後生活資金が準備できているか、点検なさってください。低金利の昨今ですが、一時払い保険であれば、貯蓄として有用です。
その際に、夫が亡くなった後の妻の老後生活資金も、漏らさずチェックしてください。
老齢年金を受給していた夫婦のうち、夫が亡くなると、妻が受け取る年金は次のようになります。
- 国民年金の世帯は、夫の年金が無くなり、妻の年金(老齢基礎年金)だけになる。
- 厚生年金の世帯は、夫の年金が遺族厚生年金に置き換わり(金額は減る)、妻の年金は継続する。
年金額に不安があれば、今のうちから準備しておきたいです。
資金に余裕があれば、安心して過ごせる施設に入るとか、便利な街中のマンションに引っ越すとか、選択の幅が広くなります。
保険の枠にこだわらず、老後生活資金の充実を意識なさってください。
老齢年金の見込み額は、入っている年金の窓口にお問い合わせください。
公的年金は仕組みが複雑なので、年金額のシミュレーション等をするなら、FPなど家計の専門家の活用をおすすめします。
保険は、何十年と続ける可能性があります。まちがった選択をしないよう、専門家を活用しましょう。
生命保険の難しいところいろいろありますがね、次の2点はとくにやっかいです。
- 「~になったら」という仮定が多すぎて、何が正解かの判断が難しい。
- 加入してから実際に使うまでの間に、数年以上のタイムラグがあるため、不良品に気がつきにくい。
商品の仕組みを理解することより、数々の「~になったら」という仮定をしっかり検討することの方が、ずっと難しいです。
そこで、一度は保険の専門家にじっくり相談することをおすすめします。
詳しいことは、
賢い生命保険の入り方
をご覧ください。