子供がいる専業主婦の世帯の保険
子供がいる、専業主婦の世帯の保険を検討するときに、どんなことに気をつけなければなりませんか?
ご検討のメインは、世帯主が亡くなったときの保障です。
ただし、専業主婦の世帯は、夫婦間の分業がはっきりしているために、主婦が亡くなったときの経済的ダメージも意外と大きいです。
そちらの検討もお忘れなく!
子供がいる専業主婦の世帯にご検討いただきたい保険と、それぞれの重要度・優先度をご説明します。
保険が得意とする4つの分野に分けて、その重要度・優先度などを説明します。
➀ 遺族の生活資金
世帯主が亡くなったときの遺族(妻、子供)の生活費として、少なくとも以下のことをご検討ください。
- 子供が経済的に自立するまでの教育・養育費用
- 妻の生活費
妻は、公的年金制度から遺族年金を受け取ることができます(ただし、受給資格を充たしていること)。とは言え、年金額は、家族構成、母子の年齢、入っている年金などによって異なります。
正確な金額は、入っている年金(国民年金、協会けんぽ、組合健保、共済組合など)にお問い合わせください。
その結果、足りないと判断されたら、世帯主の死亡保険で不足分を埋めることを検討してください。
ところで、専業主婦が亡くなると、収入面でのダメージはなくても、ひとり親になることで、世帯主の負担は確実に大きくなります。
人を雇ったり、転居したりと、思いがけない出費につながる可能性があります。
妻が亡くなったときの保障についても、やるやらないは別にして、よくご検討ください。
参考までに、平均年収400万円で、年金の加入期間25年未満の、遺族年金額の例をご覧ください。
職業 | 子供1人 | 子供2人 |
---|---|---|
自営業 (国民年金) |
1,004,600円 | 1,229,100円 |
会社員・公務員 (厚生年金) |
1,415,675円 | 1,640,175円 |
上表の子供は、18歳未満に限られます。
➁ 死後の整理資金
どんな人でも、必ず発生する費用です。ご夫婦ともにご検討ください。
ただし、相続税が高額になるような資産家を除くと、高額になりにくいです。
とくに近年は、身内だけによるこじんまりとした葬式が多くなっているようです。
急に必要になったときに、200~300万円くらい動かせるお金があるなら、保険に入る必要性は低いです。
整理資金は、亡くなられた後すぐに発生する、まとまった出費です。
まだ動揺が収まっていない時期なので、数百万円の保険金であっても、金銭的な価値以上に心強く思えるかもしれません。
また、この目的のために使われる終身保険は、いつかは必ず保険金を受け取ることができる(掛け捨てではない)ので、迷うなら入ってもよいです。
➂ 医療費
そもそも論として、日本は公的医療保険制度が充実しているので、医療保険やがん保険の必要性は低いです。
入院するときなどに保険があると心強いですが、だからと言って、保険がないと治療費を払えない、という事態は起こりにくいです。
また、加入者のほとんどは、受け取る給付金総額より、払い込む保険料累計の方が大きくなります。
とは言え、難病・奇病で生涯入退院を繰り返すリスクはゼロではありません。必要性は低いけれど、無意味というわけではありません。
就業不能保険
世帯主が入院などにより長期間働けなくなったら、その間の生活費も心配になります。
医療保険などで、金額を多めに設定できますが、限度額があるので、生活費まで確保するのは無理です。
生活費がご心配なら、医療保険とは別に、就業不能保険をご検討ください。
ただし、世帯主が企業か役所に就職されていて、協会けんぽ・組合健保・共済組合のどれかに入っているときは、傷病手当金や出産手当金が出るので、必要性は高くありません。
とくに検討していただきたいのは、自営業や会社経営をされている方々です。
➃ 生活資金(学資・老後)
他の金融商品と同じく、貯蓄型保険の利回りもこの数年低水準です。
しかも、主力商品は固定金利(加入した時の金利に固定される)です。元本保証はありますが、低い金利で固定されるので、魅力度は低いです。
ただし、定期預金など、他の金融機関の元本保証がある商品に比べると、利回りは少し上なので、迷うところです。
また、生命保険料控除が適用される入り方をすれば、節税になります。
元本保証にこだわるなら、貯蓄型保険は選択肢になります。
とくに、15~20年間で教育資金を貯める学資保険の場合、他に選択肢が少ないのが実状です。
近年、外貨建ての一時払い保険などが注目されています。
利回り面で有利な商品は多いようですが、元本割れのリスクがあります。
また、何かにつけて手数料がかかるので、仕組みを分かっていないと損をしやすいです。
外貨運用に自信がある方、興味がある方以外には、おすすめしにくいです。
【参考】4つの分野の概要
年代や家族構成などにかかわりなく、意識していただきたい基本事項を、下表に整理しました。
遺族の生活費 |
|
---|---|
死後の整理資金 |
|
医療費 |
|
生活資金(学資・老後) |
|
遺族にお金を残すなら、収入保障保険がおすすめです。ムダが少ない死亡保険です。
世帯主が遺族に保険金を残すなら、子供が経済的に独立するまでの教育費用・養育費用がおもなターゲットです。
このような、期間が限定されている死亡保障には、定期保険か収入保障保険が向いています。
高額な死亡保障には、掛け捨て保険が現実的
ちなみに、定期保険か収入保障保険も掛け捨て保険です。
掛け捨て保険は、保険を使わないと保険料が戻ってきません。そのことをもったいなく感じる方が多いです。
しかし、貯蓄型の保険(払った分が必ず戻る保険)で、遺族のための死亡保障を準備するのは現実的ではありません。保険料が高くなりすぎます。
たとえば、35歳男性が、60歳までの間1500万円の死亡保険に入るとします。
その場合、月々の保険料は、定期保険(掛け捨て)と終身保険(貯蓄型)とで、次のようになります(オリックス生命の商品で見積もり)。
- 定期保険(掛け捨て) 月額4,560円
- 終身保険(貯蓄型) 月額21,615円
このシミュレーションでは、月々の保険料が5倍近くにまでなりました。
ムダが出にくい掛け捨て保険は、収入保障保険
定期保険と収入保障保険の、死亡保険金の仕組みを図にすると、下のようになります。
定期保険は、契約期間内であれば、いつ亡くなっても同一の金額が出ます。
一方、収入保障保険は、亡くなる時期が満期に近くなるほど、保険金額は少なくなります。
収入保障保険の方が損に見えるかもしれませんが、実はこの方が合理的です。
亡くなる時期が遅くなるほど、子供の経済的自立の時期に近くなるので、必要な保険金額が少なくなるからです。
もちろん、保険料も、収入保障保険の方が安くなります。
迷うくらいだったら、終身保険に加入した方が良い理由があります。どっちに転んでも、損にならないのが魅力です。
掛け捨て保険は、保険を使わなければ、お金は戻りません。必要のない掛け捨て保険に入るのは、お金を捨てるようなものです。
それに比べると、必要性を感じないで終身保険に入っても、金銭的な損にはなりません。
終身保険が損にならない理由
終身保険では、死亡保障が一生続くので、いつかは必ず死亡保険金を受け取ることができます。
そして、死亡保険金は、払い込んだ保険料総額より大きくなるので、金銭的に損をすることはありません。
なお、途中で解約したら、払い込んだ保険料の一部が戻ります。全額ではないので、途中での解約は損になります
ただし、掛け捨て保険を解約しても戻るお金はわずかなので、それよりはマシです。
どうせ入るなら、早く入る方がおトク
生命保険の保険料は、通常は、加入する年齢が高くなるほど、金額が大きくなります。
それだけでなく、入る時期が遅くなるほど、保険料の総額が大きくなる傾向があります。
オリックス生命の終身保険『RISE(ライズ)』の保険料と解約返戻率のシミュレーションをご覧ください。
それぞれの年齢の男性が、死亡保険金500万円、60歳までの保険料払い込みで加入したときの、保険料総額と解約返戻率(解約したときの戻り率)をシミュレーションしました。
加入年齢 | 月々の保険料 (支払い総額) |
解約 返戻率 |
---|---|---|
30歳 |
10,920円
(3,931,200円) |
110.8%
|
40歳 |
17,470円
(4,192,800円) |
103.8%
|
50歳 |
37,690円
(4,522,800円) |
96.3%
|
早く入るほど、1回あたりの保険料も、保険料総額も、解約返戻率も有利です。
条件が合えば、保険料の合計より、解約で戻る金額の方が、大きくなることもあるのですね!
子供のいる専業主婦の世帯についての、よくある疑問に、Q&A形式でお答えします。
専業主婦は、生命保険に平均いくら入っていますか?
生命保険文化センター『生命保険に関する全国実態調査』(平成30年度)によると、以下の通りでした。
- 専業主婦の加入率74.2%
- 一人平均1.7件。
- 死亡保険金額650万円
- 1日当たりの入院給付金7,860円
加入率
仕事をしている妻が平均83.3%なので、約10%も低いです。
件数
仕事をしている妻が平均1.7件なので、同じ件数です。
死亡保険金額
仕事をしている妻が平均876万円なので、それより200万円ほど低いです。
入院給付金
仕事をしている妻が平均8,960円なので、1,000円以上差があります。
専業主婦の保険の契約者(保険料を払う人)は、夫と妻とどちらがオトクですか?
医療保険やがん保険は、そもそももらったお金に税金がかからないので、収入がある夫を契約者にするのが一般的です。
一方、受け取るお金に税金がかかる保険(死亡保険、個人年金保険等)では、契約者を妻にする方が、節税になります。
ただし、妻には収入がないので、保険料を夫から毎年贈与してもらわなければなりません。
年間110万円までの贈与なら贈与税はかかりませんが、税務署に説明できるように証拠(贈与契約書、通帳等)を残す必要があります。
夫から妻に保険料を贈与するときは、毎年贈与契約書を作成してください。
面倒なようですが、毎年同じ文面をコピーして、記名押印するだけです。また、印紙を貼る必要はありません。
そして、将来の保険金受け取りまで、しっかり保管してください。
専業主婦にとって、入らなければならない生命保険は何ですか?
上の生命保険文化センターの調査によると、専業主婦の4分の3は、何かの生命保険に加入されています。
とはいえ、日本は社会保障が充実しています。預貯金をある程度できていれば、保険がなくともやっていけると思われます。
もし、検討されるなら、かなり先のことになりますが、夫が亡くなった後の老後生活資金を気にかけてください。
老齢年金を受給していた夫婦のうち、夫が亡くなると、妻が受け取る年金は次のようになります。
- 国民年金の世帯は、夫の年金が無くなり、妻の年金(老齢基礎年金)だけになる。
- 厚生年金の世帯は、夫の年金が遺族厚生年金に置き換わり(金額は減る)、妻の年金は継続する。
年金額に不安があれば、今のうちから準備しておきたいです。
資金に余裕があれば、安心して過ごせる施設に入るとか、便利な街中のマンションに引っ越すとか、選択の幅が広くなります。
保険の枠にこだわらず、老後生活資金の充実を意識なさってください。
老齢年金の見込み額は、入っている年金の窓口にお問い合わせください。
公的年金は仕組みが複雑なので、年金額のシミュレーション等をするなら、FPなど家計の専門家の活用をおすすめします。
保険は、何十年と続ける可能性があります。まちがった選択をしないよう、専門家を活用しましょう。
生命保険の難しいところいろいろありますがね、次の2点はとくにやっかいです。
- 「~になったら」という仮定が多すぎて、何が正解かの判断が難しい。
- 加入してから実際に使うまでの間に、数年以上のタイムラグがあるため、不良品に気がつきにくい。
商品の仕組みを理解することより、数々の「~になったら」という仮定をしっかり検討することの方が、ずっと難しいです。
そこで、一度は保険の専門家にじっくり相談することをおすすめします。
詳しいことは、
賢い生命保険の入り方
をご覧ください。