通院特約はあまり役立たない

通院特約はあまり役立たない

多くの医療保険に、通院特約が用意されています。しかし、役に立つ場面は限られていて、お勧めできません。

医療技術の進歩にともない、三大疾病や七大生活習慣病のような、生命にかかわる病気ですら、通院のみで治療に取り組む患者数が増えています。

ところが、もともと医療保険は、入院保障メインの保険です。そのままでは、通院治療に対応できません。そこで、多くの医療保険が、通院特約を用意しています。

しかし、通院特約の中身を調べると、使える場面は限定されていて、さほど役に立ちそうもありません。

そこで、通院特約以外の、通院費用の準備方法をご案内します。

治療1回あたりの費用は、入院が大きいです。しかし、生涯にかかる金額は、通院費用の方が大きいです。

厚生労働省『医療保険に関する基礎資料』(平成26年)によると、入院費用と通院費用の、1年あたりの個人の自己負担額は、下表のとおりです。

入院費用と通院費用の、1年あたりの個人の自己負担額

水色が通院費用です。パッと見てわかるように、通院費用が、入院費用を大きく上回っています。

高齢になるほど入院費用の割合が大きくなります。しかし、入院費用が通院費用と同じくらいになるのは、90代になってから。日本人の平均寿命より後です。

医療保険は、入院保障がメイン

世の中では、たくさんの医療保険が販売されていますが、その大多数の主契約は・・・

  • 入院給付金(入院日数に応じてお金が出る)
  • 手術給付金(手術を受けると、所定の金額が出る)

の2つです。

入院給付金は、名称のとおり、通院治療では、全く役に立ちません。

手術給付金は、通院で手術を受けても、もらうことができます。少しは通院で役に立ちますが、使える機会は限られます。

というように、医療保険は、入院費用の準備をメインとした保険です。

入院費用の方が、まとまった出費になりやすい

医療保険が、入院費用を重視する理由は、通院に比べて、短期間に、まとまった出費になりやすいからです。

厚生労働省『医療給付実態調査』(平成27年)から、入院、通院、歯科の、国民一人あたりの1日分の医療費を引用します。

なお、表の金額は、健康保険の自己負担(1~3割)ではなく、医療費の実費です。

  • 入院 ・・・ 33,740円
  • 通院 ・・・ 8,510円
  • 歯科 ・・・ 6,720円

やはり、入院の方が、通院や歯科より、ずっと高額です。

入院すると、短期間にまとまった出費になります。また、入院期間中、収入が減るかもしれません。
そうした非常事態に備えるのが、医療保険の主たる目的です。

ただし、医療技術の進歩などにより、重い病気でも、通院で治療するケースが増えつつあります。
そんな現状に応えるために、通院特約を用意する医療保険が、多くなっています。

医療保険の通院特約は、使える期間や病気が限定されています。値打ちのある保障とは、言いにくいです。

多くの医療保険に、通院特約が用意されています。ただし、中身を調べると、条件や制限があって、使える場面は限られます。

通院特約には、2つのパターンがある

通院特約の保障内容は、保険会社によって異なりますが、大きく2つのタイプに分けられます。

  • 通院の期間が限定されている。
  • 病気や治療法が限定されている。

通院の期間が限定されている特約は

入院前後、または入院後の数ヵ月間の通院のみ、対象になります。
つまり、入院することが前提になっています。
このタイプの通院特約が、多数派です。

病気や治療法が限定されている特約には

オリックス生命のがん通院特約などが、あります。

この特約では、病気ががんに限定されています。さらに、治療方法が4つに限定されています。

さらに条件が付きます。がん通院特約を付加するためには、一時金の特約(重度三疾病一時金特約かがん一時金特約)を同時に付加しなければなりません。そのため、保険料が跳ね上がります。

通院費用は、原則として、生活費の一部と考える

冒頭でご説明したように、わたしたちが生涯に負担する通院費用は、それなりに大きな金額になります。
しかし、残念ながら、医療保険は、通院費用の準備の点では、あまり役に立ちません。

通院費用は、衣食住にかかる生活費の一部として、家計の中でやりくりするのが原則です。

三大疾病、七大生活習慣病の中には、通院患者数が多かったり、急増している病気があります。

通院と一言で言っても、カゼや虫歯などの軽いものから、三大疾病や七大生活習慣病のような重い病気まで、幅広いです。
生死にかかわる病気の通院には、できる範囲で備えたいです。

七大生活習慣病の中で、通院費用が気になる病気

日本人がかかりやすい7つの重病は、七大生活習慣病と呼ばれます。
三大疾病(がん、心疾患、脳血管疾患)に、糖尿病、高血圧性疾患、肝疾患、腎疾患の4つの病気を加えると、七大生活習慣病になります。

それぞれ大きな病気ですが、治療の初期段階では、通院しながら、薬を規則的に服用しつつ定期的に検査を受ける、というようなケースが多いようです。

こうしたケースでは、1回あたりの治療費は大きくなりにくいです。しかし、一生付き合うかもしれない病気ばかりなので、積もり積もって大きな金額になる危険性があります。

七大生活習慣病の中で、通院費用が気になる病気を抜き出しました。

がんは、通院患者が急増中

がんは、日本人の半分弱がかかり、3.5人に1人が、亡くなくなる病気です。

下のグラフは、厚生労働省『患者調査』(平成26年)をもとに作成した、がんの入院患者数と通院患者数の、過去18年間の推移です。

がんの入院患者数と通院患者数の、過去18年間の推移

入院患者数は、平成17年から着実に減っています。そのかわり、平成14年の調査から、通院患者数は、かなりの勢いで増加しています。

心疾患は、通院患者数は減っているものの、数は多い

心疾患は、三大疾病の一つであり、日本人の死因では、がんに次いで2位の病気です。

厚生労働省『患者調査』(平成26年)をもとに、入院患者数と通院患者数の、過去18年間の推移をグラフにしました。

心疾患の入院患者数と通院患者数の、過去18年間の推移

入院患者数はゆるやかに減っています。

通院患者数も、平成8年当時と比べると大幅に減っています。それでも、入院患者の2倍以上います。
そして、平成20年以降、微増に転じている点は気になります。

糖尿病は、ここ数年、通院患者数が急増

糖尿病は、重症化すると怖いだけでなく、他の様々な病気を引き起こします。

厚生労働省『患者調査』(平成26年)をもとに、入院患者数と通院患者数の、過去18年間の推移をグラフにしました。

糖尿病の入院患者数と通院患者数の、過去18年間の推移

入院患者数は着実に減っています。
通院患者数は、増減を繰り返しているものの、平成20年以降は、目に見えて増えています。

平成26年の調査結果では、通院患者数が、入院患者数の10倍以上に達しています。

高血圧性疾患は、糖尿病と似た傾向

厚生労働省の統計データを見る限り、上の糖尿病と似た傾向です。

他の病気と同じく、入院患者数と通院患者数の、過去18年間の推移をグラフにしました。

高血圧性疾患の入院患者数と通院患者数の、過去18年間の推移

入院患者数は、もともと多くありませんでしたが、調査のたびに減っています。
通院患者数は、増減を繰り返していますが、入院患者数よりはるかに多いです。

腎不全も、通院患者数が多い

腎不全は、日本人の死因の7位です。三大疾病以外の七大生活習慣病では、もっとも高順位です。
腎不全が重症化すると、人工透析を受けることになります。人工透析を受けると、生活が治療中心になってしまいます。

厚生労働省『患者調査』(平成26年)をもとに、入院患者数と通院患者数の、過去18年間の推移をグラフにしました。

腎不全等の入院患者数と通院患者数の、過去18年間の推移

通院患者数は、平成20年の調査まで、すごい勢いで増えていました。幸い、その後減少に転じています。それでも、入院患者数の3倍以上に上ります。

がんの通院費用は医療保険で準備できます。その他の病気は、医療保険だけでは、準備しきれません。

上で、七大生活習慣病のうち、通院費用が気になる病気をピックアップしました。

  • がん
  • 心疾患
  • 糖尿病
  • 高血圧性疾患
  • 腎不全

この5つのうち、医療保険を使って、通院費用をしっかりと準備できそうなのは、がんだけです。

がんの通院費用を準備する2つの方法

医療保険を使って、がんの通院費用を準備する方法のうち、普及しているものを2つご案内します。

がん診断一時金特約

たいていの医療保険には、がんの診断一時金の特約が、用意されています。

がんの診断が確定したら、入院か通院かにかかわりなく、保険からお金が出ます。一時金の金額を大きく設定しておくと(たとえば100万円以上)、長期の通院費用をカバーできます。

特約には、3つのタイプがあります。

  • がん診断一時金タイプ
  • 三大疾病一時金タイプ(がん、心疾患、脳血管疾患)
  • 特定疾病一時金タイプ(七大生活習慣病など)

いずれのタイプでも、がんの取り扱いは同じです。診断が確定したら、一時金をもらえます。

なお、三大疾病一時金タイプと特定疾病一時金タイプは、病気によって、一時金の支払い条件が異なります。診断だけで一時金が出るのは、がんだけです。

がんの通院特約

一部の医療保険で提供されています。がんで入院した後の通院(期間の制限あり)の他、所定の治療を受ける通院で、給付金をもらえます。

上で、オリックス生命の例をご案内しましたが、いろいろと制限が設けられています。

がん以外の病気は、入院後の通院費用なら、準備できる

がん以外の病気を、通院のみで治療する場合、医療保険はほとんど役に立ちません。
ただし、入院後の通院に限れば、いくつかの方法で準備できます。

がん以外は、入院しないと一時金は出ない

三大疾病や七大疾病で一時金が出る特約は、病気によって、一時金が支払われる条件が異なります。

がんは診断確定で一時金が出ますした。
しかし、心疾患や脳血管疾患は、診断後に入院しないと、一時金をもらえません。保険会社によっては、入院日数を含めた条件にしています(20日以上入院など)。

よって、一時金が出る特約は、がん以外の病気では、ありがたみが減ります。

入院後の通院費用なら、準備できる

医療保険の通院特約は、病気・ケガの種類に関係なく、退院後の数ヵ月間(保険会社によって異なります)の通院費用を、保障します。

七大生活習慣病は、一生付き合うことになるかもしれない病気ばかりなので、数ヵ月の保障では、頼りないです。

退院後の通院のために、ある程度まとまった金額を準備するなら、入院給付金日額を、できるだけ高く設定する方が、より効果的です。

健康保険等の高額療養費制度を活用するなら、年齢や所得によって、自己負担額は自ずと決まります。
入院給付金が、清算後にいくらか残るように、入院給付金日額を自己負担額より高く設定します(やり方は、保険の専門家にご相談ください)

もちろん、手元に残ったお金は、通院費用や自宅療養の費用に回します。

検討にあたって、候補に加えてほしい医療保険を、いくつかご案内します。

七大生活習慣病のような、重い病気で入院した後の、通院費用の準備に適した商品を、いくつかご案内します。

ただし、その前に、あらかじめ候補から外しておきたい商品をご覧いただきます。

国内大手損保の医療保険は、候補から外しておきたい

現在販売されている医療保険はたくさんあります。検討を効率的に進めるため、あきらかなデメリットがある商品は、初めから外しておきたいです。

となると、その筆頭は国内大手生保(日本生命、明治安田生命、第一生命、住友生命、三井生命など)の医療保険です。

その理由は、単純に保険料が高いからです。
国内大手生保は、自社の従業員である営業職員が販売を担当しています。そして、全国に販売拠点を設けています。
そうしたコストが保険料に反映されるため、どうしても割高になります。

そんなもののために高い保険料を払うのなら、割安な他社商品に加入して、給付金額を少しでも大きくしたいです。

候補に加えていただきたい医療保険

候補に加えていただきたい商品を、以下にご案内します。
それぞれのセールスポイントも、箇条書きで併記しています。

オリックス生命
CURE Next(キュア・ネクスト)
  • 重度三疾病一時金特約は、支払い条件が、他社より緩やか。
  • がん通院給付金は、治療法の制約はあるが、支払日数無制限。
SOMPOひまわり生命
健康のお守り
  • 入院給付金日額は最大20,000円まで。
  • 手術給付金は最大入院給付金日額の40倍まで。
  • 入院一時金が最大入院給付金日額の200倍まで。
チューリッヒ生命
終身医療保険プレミアムDX
  • 入院給付金日額は最大15,000円まで。
  • 手術給付金は最大入院給付金日額の20万円まで。
  • 入院一時金が最大入院給付金日額の20万円まで。
ネオファースト生命
ネオdeいりょう
  • 入院一時金が入院給付金日額の10倍。
  • 治療保障特約により、入院一時金が最大30万円まで。

保険犯罪を防ぐため、保険金額や給付金額には、金額制限が設けられています。金額を大きく設定できて、かつ保険料が高くなりにくい商品を選びました。

これらの医療保険は保険料の差が小さいので、年齢、性別、保障内容などによって、割安さの優劣は入れかわります。

ご自身の条件で見積もりをして、保障と保険料のバランスを見ながら、ご判断ください。

保険のプロに相談するなら、中立性が高く、商品を比較できるところを選びましよう。

わかりにくい保険だからこそ、中立な立場で助言してくれるプロに相談したいです。

保険ショップか独立系FP

保険を販売する人たちを、中立性と商品知識の2つの角度から分類したのが下の図です。

商品知識 保険ショップ 独立系FP 銀行窓口 一般の保険代理店 保険会社の直営 店または営業

お勧めしたいのは、赤い文字の「保険ショップ」または「独立系FP」です。ここでの「保険ショップ」は、全国チェーンかそれに近い規模のものを指します。

保険ショップ
  • 取り扱う保険会社数がもっとも多く、中立性は高い。
  • 各社の商品についてよく知っているが、保険・家計の知識は店舗による。
独立系FP
  • 複数の保険会社の商品を取り扱うので、中立性はそこそこ高い。
  • 各社の商品についてよく知っており、保険・家計の知識もある。

担当の人が公正な人柄で、勉強熱心であっても、こちらに勧めてくるのは自分が販売できる商品です。結局はかたよってしまいます。

また、販売できない商品については、保障プラン設計や見積作成の機会がないので、商品知識が深まりません。

できるだけ多くの保険会社の商品を取り扱えるプロに相談するのが無難です。

お勧めしたい保険のプロはこちら

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